もし中国を攻撃するなら事前連絡する...トランプ時代の密約が明らかに
Perilous Authority
スワンの記事によるとミリーと李の会話内容も、ウッドワードとコスタの記述とはやや違う。スワンの情報筋によれば、ミリーの発言は大まかに次のようなものだった。
「もしも戦争になる場合にも、奇襲攻撃は行わず、そちらが先制攻撃を行う理由もない」
これなら、奇襲攻撃について中国に事前警告を約束したことにはならない。スワンの説明が真実ならば、ミリーの対応はまっとうなものだ。
だが、問題はまだある。FOXニュース記者ジェニファー・グリフィンのツイートによれば、ミリーと李の2度の電話には国務省の代表者を含む15人の当局者がテレビ会議で同席し、会議内容の要約が諜報部門などと共有された。
地球を吹き飛ばす権限
この説明から大統領の権限をめぐり、一層大きな問題が浮上する──大統領はどれだけの権力を持つべきなのか。
李がアメリカによる中国攻撃の恐れを懸念し、ミリーがその可能性を認めた会話を十数人の当局者が聞いていたのなら、彼らの一部はミリーと同じく、トランプが制御不能になって中国を攻撃しかねないと懸念していたことを意味するのではないか。
もしそうなら、彼らは大統領が職務遂行能力を失った場合について定めた憲法修正第25条の規定を発動するか、少なくとも発動を真剣に検討すべきだった。当局者がそうせずに現状維持を選んだという事実こそ、憂慮されるべきだ。
17年、共和党が多数派だった上院外交委員会が、核攻撃を開始する大統領権限の制限について公聴会を開いた。トランプが国家安全保障上の利益に沿わない核攻撃を命じる可能性を想定したものだった。
ここで問題になるのが、前述の大統領権限だ。米大統領は核攻撃の開始について独占的な権限を持つが、これは大統領が正気だという前提に基づいている。
だが、この前提は憲法の精神に合致していない。アメリカの建国の父たちは、連邦政府に立法・行政・司法の3部門を設け、各部門にある程度の拒否権を与えた。やがて大統領に専制君主が選出される事態を恐れたからだ。
建国の時代に核兵器が存在していたら、アメリカ建国の父たちは大統領の権限を制限していたかもしれない。だが、実際には制限が課されることはなかった。そして核兵器誕生から70年以上に及ぶ歴史の中で、その他のあらゆる絶対的権限を阻止しようとした建国の父たちの意図をくんで、地球を吹き飛ばす絶対的権限を大統領から取り上げようとした者は、一人もいなかった。
核管理に関して行われた2度の公聴会(1度目はニクソン政権時代、2度目はトランプ政権の初期)は、問題と危険をはっきり認識しながらも、何も手を打つことはなかった。ミリーが作戦指令室で行った会議と、彼と李との電話会談で本当は何があったのかは分からない。だが次に暴君が権力の座に就く前に、この大きな問題を解決すべきだ。
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