最新記事

北朝鮮

高級ホテルのWi-Fiはなぜ危険? 北朝鮮ハッカーの手口と防御策

Free Wi-Fi Vulnerable

2021年8月3日(火)17時47分
ジェーソン・バートレット(新米国安全保障センター研究員)
七宝山飯店

北朝鮮ハッカー部隊の「アジト」だった遼寧省のホテル(2017年) SUE-LIN WONGーREUTERS

<脆弱なセキュリティーの穴を突くオンライン犯罪の終わらない危険と必要な対策>

旅行者にとって、無料Wi-Fiはいわば必需品。とはいえ、悪意ある住人がうごめくデジタル世界への入り口になることもある。

問題だらけのセキュリティー、旅先での気の緩み、EC(電子商取引)やデジタル金融活動の拡大――3つの要素が組み合わさった危険な状態は、理想的なサイバー犯罪環境になっている。

意外な場所から、極めて独創的な手法でサイバー攻撃を仕掛けてきた実績を持つのが北朝鮮だ。

2014年に起きたソニー・ピクチャーズ エンタテインメントへのサイバー攻撃はタイの5つ星ホテル「セントレジス・バンコク」が発信源と確認され、悪名高い北朝鮮のハッカー集団ラザルス・グループが実行者とされた。言い換えれば、北朝鮮がタイのホテルのWi-Fiを使って世界的企業を攻撃したのだ。

セキュリティー侵害や盗難を目的とする北朝鮮のサイバー攻撃はこの何年間も、個人や金融機関、仮想通貨取引所を標的に大成功を収めてきた。

中国やロシアの攻撃ほど進んでいないとの声もあるが、アメリカなどの技術大国での成功例を見れば、明らかに誤解だ。ただし、先端技術やウェブへのアクセスで勝る中国やロシアと大きく違って、北朝鮮の場合は制裁の影響が少なくセキュリティーが緩い国外の場所から攻撃を仕掛ける必要がある。ホテルや商業施設はそのいい例だ。

北朝鮮工作員の拠点だった中国のホテル

中国系企業はたびたび、雇用や合弁事業という名目で、北朝鮮工作員が自由に活動する道を提供してきた。なかでも有名なのが、中国北東部の遼寧省・瀋陽にあったホテル、七宝山飯店だ。

同ホテルは長年、北朝鮮のサイバー攻撃訓練・実行の場だったとされる。報道によれば、国際社会の圧力や国連の制裁を受けて17~18年に営業を停止したが、これはおそらく北朝鮮国外に無数にある拠点の1つにすぎない。

頻発する北朝鮮のサイバー犯罪問題の解決策には程遠いが、全般的なセキュリティー侵害リスクを制限する方法は存在する。

旅行者にとって基本的、かつ重要なステップはパスワードで保護された小型ルーターを持参するか、VPN(仮想プライベートネットワーク)を利用することだ。

ホテルなどはスタッフの「サイバー衛生」教育を徹底し、パスワードを再設定すべきだ。セキュリティーシステムの定期的なアップデートや予告なしのパスワード変更もリスク低減につながるだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 

ビジネス

米地銀リパブリック・ファーストが公的管理下に、同業

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年2月以来の低水準
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ」「ゲーム」「へのへのもへじ」

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    走行中なのに運転手を殴打、バスは建物に衝突...衝撃…

  • 7

    ロシア黒海艦隊「最古の艦艇」がウクライナ軍による…

  • 8

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 9

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中