右傾化した米連邦最高裁の「死のノート」判決 トランプ退任後も乱発
下院司法委員会は2月18日、通常の司法監視機能の一環として、「シャドー・ドケット」に関する最初の公聴会を開いた。この中で民主・共和両党のメンバーは、同手続きの秘密主義的な性質への懸念を表明した。
だが一部の共和党関係者は、独自に緊急措置を申請することでバイデン政権の政策を手軽に阻止できる可能性があることを歓迎している。アラバマ州のスティーブ・マーシャル司法長官(共和党)は、他州の共和党系司法長官とともに、違法と思われるバイデン政権の政策を阻止するために、「シャドー・ドケット」適用の申請を行うことを「断固として」考慮するだろうと述べている。
「(迅速に)勝ち負けを決定する本当のチャンスだ」と彼は言う。
トランプ政権下の司法省で勤務していた弁護士のハシム・ムーパン氏は、最近の事件について連邦最高裁が「シャドー・ドケット」を利用していることを擁護する。同氏によれば、特定の司法管轄地域にしか適用されないはずの下級裁判所の判決が全国規模の政策を阻害している現状があり、「シャドー・ドケット」申請の多くはそうした問題が契機になっている。
「全国規模でそうした問題に見解を出すとすれば、連邦最高裁がその役にふさわしい」とムーパン氏は言う。
死刑判決では顕著な変化
テキサス大学オースティン法科大学院のスティーブン・ブラデック教授によれば、トランプ政権は任期中に「シャドー・ドケット」申請を41件提出、そのうち28件が承認されており、70%近い成功率となっている。ジョージ・W・ブッシュ政権とバラク・オバマ政権の16年間に提出されたのはわずか8件、そのうち4件が承認された。
シカゴ大学のボード教授は、「明らかに偏りが見られる」と語る。「政府、特に連邦政府には、裁判所の注意を惹く特別な能力がある」
「シャドー・ドケット」は以前から連邦最高裁の業務の中で使われてきたが、トランプ政権の司法省は、これまでの慣例に反し、気にくわない下級裁判所の判決を覆すべく、時には控訴裁判所の頭越しに、こうした緊急措置の申請を繰り返してきた。
最も顕著な変化が、連邦裁判所での死刑判決をめぐるものだ。昨年7月から1月までのあいだに、連邦最高裁判事は8回にわたり、連邦政府による死刑執行を停止した下級裁判所の判決を覆してきた。ほとんど、あるいはまったく説明が行われないことも多かった。
たとえば連邦最高裁は1月13日未明、たった2文の簡潔な命令により、ミズーリ州における陰惨な殺人事件に関するリサ・モンゴメリー死刑囚に対する刑の執行を可能にした。ミズーリ州で収監されていた52歳のモンゴメリー死刑囚は、2004年12月に、当時妊娠8カ月だったボビー・ジョー・スティネットさんを絞殺した罪で死刑判決を受けた。モンゴメリー死刑囚は逮捕前、スティネットさんの子宮から胎児を取り出し、自分の子に見せかけようとしていた。
2つの下級裁判所は、技術的な理由により死刑執行を停止していた。だが連邦最高裁は、根拠を示さないまま、双方の判決を覆した。
モンゴメリー死刑囚は、連邦最高裁による最終決定から90分後、薬物注射による死刑を執行された。