最新記事

日英関係

ブレグジット後は日本と仲良くなりたいイギリスの事情

“GLOBAL BRITAIN” AND JAPAN

2021年3月30日(火)18時00分
ナイアル・グレー
2月にオンラインで行われた日英の2プラス2会合

2月にオンラインで行われた日英の2プラス2会合 Franck Robichon-Pool-REUTERS

<アジア太平洋を重視する戦略の柱とみているが、対中政策では大きな温度差もある>

「目立たない外交」が優れた外交ならば、その手本は最近の日英関係かもしれない。以前から固い絆で結ばれてきた両国は、あまりメディアには注目されていないものの、着実にパートナーシップを築いてきた。

いい例が、両国間の巨額の貿易高だ。最近になってブレグジット(イギリスのEU離脱)という不安定要因が加わったが、イギリス側はこれを逆に外交関係を強化する好機にしたいと考えている。

この路線は特に与党・保守党内で支持されており、EU域外の国々にさらに目を向けて真にグローバルな展開を目指す「グローバル・ブリテン」がスローガンとなっている。この構想を実現させるため、イギリスは新たなアジア太平洋戦略の柱として、日本とのより強固な関係構築を目指しているようだ。

昨年10月には、日英間で自由貿易協定が締結された。エリザベス・トラス国際貿易相が「歴史的な瞬間」と評したこの合意は、イギリスにとって日英の協力関係推進の意図をアピールする格好の材料となった。

だがイギリスにとって、この協定の本当の重要性は、包括的かつ先進的TPP協定(CPTPP)加盟を見据えた取り組みだという点だ。イギリスは今年2月、CPTPPへの加盟を正式に申請した。アメリカが同協定への再加盟についてまだ明確な姿勢を示していないことを考えると、イギリスの加盟が承認されればCPTPPが日英中心の取り組みとなる可能性は十分にある。

日英関係は防衛分野でも明らかに進化している。両国はイギリスのEU離脱以降、安全保障面での関係強化を追求してきた。

「D10連合」をめぐる溝の原因

ドミニク・ラーブ英外相は2月、「イギリスのインド太平洋重視」政策において日本が重要な位置にあることを強調。英海軍の空母クイーン・エリザベスは年内に日本の自衛隊との合同演習に参加する予定だ。

合同演習には、もちろん単なる親善にとどまらない意味合いがある。日英両国の首相は2月の電話会談で、海洋の安全保障体制に触れた。詳細は不明だが、東シナ海や南シナ海での中国のプレゼンス拡大を牽制することが、両国の最優先課題となっているようだ。同じく2月に開かれた日英の外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)でも、中国が施行した海警法について意見を交換した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年1月以来の低水準

ワールド

アングル:コロナの次は熱波、比で再びオンライン授業

ワールド

アングル:五輪前に取り締まり強化、人であふれかえる

ビジネス

訂正-米金利先物、9月利下げ確率約78%に上昇 雇
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 10

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中