最新記事

フランス

大麻に厳しい国・フランスで、大麻成分入りのワインが誕生した訳

2021年3月9日(火)18時00分
冠ゆき

フランス人のアルコール消費量は、1960年以来減少傾向にある  Burdi W

<フランスは欧州の中でも、大麻の取り扱いに厳しい国だ。そのフランスのボルドーで、大麻の成分のひとつであるカンナビジオール(CBD)入りワインが初めて生まれた理由とは...... >

フランスのボルドーで、大麻の成分のひとつであるカンナビジオール(CBD)入りワインが初めて生まれた。その背景から、フランスのワイン事情と大麻事情を紹介する。

ワイン離れが進む世代へのアプローチ

Burdi Wと名付けられたこのドリンクは、プティヴェルドと呼ばれる単一品種のブドウで生産された地元のワインにCBDを250mg組み合わせたもので、ヘンプの香りにカシス風味がプラスされている。

この商品を世に出したラファエル・ド・パブロ氏は、「クラシックなアルコール効果にリラックス効果が追加された」ドリンクだと胸を張る。同商品は、若い世代の目をワイン向けさせることも目的としている。蛍光色を使って大麻の葉のデザインしたボトルラベルも、若い世代へのアプローチ効果を狙ったものだ(Cnews)。

実は、フランス人のアルコール消費量は、1960年以来減少傾向にある。それでも2017年の発表によれば、経済協力開発機構加盟国34か国(調査当時)の中で6番目にアルコール消費量の多い国だ。具体的には、15歳以上の国民1人につき1年に平均11.7リットルのアルコールを消費している(フランス国立公衆衛生庁)。余談だが、この統計が15歳以上でとられているというのは面白い。というのも、フランスでもアルコール摂取は成人(18歳)になるまでは許されないはずのものだからだ。

フランス人が最も好むアルコール飲料1位は相変わらずワインだが、年代を区切るとこの限りではない。若い世代はカクテルなどに用いられる蒸留酒を最も好み(67.3%)、それにビール(63.5%)が続き、ワイン(35.9%)は3位でしかない。Burdi Wはそんな世代の目をワインに向けさせる役目を背負って誕生したというわけだ。

大麻に厳しい国、フランス

カンナビジオール(CBD)は、麻から抽出できるカンナビノイドの一種だが、いわゆる麻薬のような精神作用は持たない。それどころか「抗テンカン」「抗炎症」などの作用が認められており、2019年にはEUが、CBDを原料とする医薬品を承認している。それにもかかわらずフランスは国内でのCBD使用を禁止していたため、2019年11月、欧州司法裁判所に違法であると裁定されている。

このことからもわかるように、フランスは欧州の中でも、大麻の取り扱いに厳しい国だ。大麻は、たとえ自宅で一人で吸ったとしても、論理上は1年の懲役と3750ユーロの罰金を科せられる刑事犯罪なのだ。ただし、実際にはほとんどの場合、2019年導入された200ユーロの定額罰金制度が適用されている。大麻を栽培した場合はさらに厳しく、10年の懲役が刑法で規定されており、販売、流通、購入にかかわった場合も基本的には10年の懲役を科せられる(個人使用の場合は5年)といった具合だ(フランスアンフォ)。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

英サービスPMI4月改定値、約1年ぶり高水準 成長

ワールド

ノルウェー中銀、金利据え置き 引き締め長期化の可能

ワールド

トルコCPI、4月は前年比+69.8% 22年以来

ビジネス

ドル/円、一時152.75円 週初から3%超の円高
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中