最新記事

発掘

2万年以上前のホラアナグマ、ほぼ完全な状態で発見される

2020年9月18日(金)15時45分
松岡由希子

2万2000年前〜3万9500年前のものとみられる North-Eastern Federal University Yakutsk

<北極海にあるロシア領リャーホフスキー諸島で、約1万5000年前に絶滅したホラアナグマの成体の死骸がほぼ完全な状態で見つかった。2万2000年前〜3万9500年前のものとみられる......>

北極海にあるロシア領リャーホフスキー諸島で、約1万5000年前に絶滅したホラアナグマの成体の死骸がほぼ完全な状態で見つかった。

現在の最大級のクマよりも200キロ重い

ホラアナグマは、更新世後期にユーラシア大陸で生息していたクマ科の動物だ。オスでは、体重が1トンに達するものもあり、現生で最大級のクマよりも227キロほど重い。

絶滅後に見つかっているのは、これまで骨と頭蓋骨のみであった。島のトナカイ飼育民によって偶然発見されたこのホラアナグマの死骸は、鼻や内蔵など、軟部組織がそのまま残存している点で、重要な意義を持つ。

matuoka0918b.jpg

North-Eastern Federal University Yakutsk


絶滅したマンモスやサイの研究に取り組むロシアの北東連邦大学(NEFU)がこのホラアナグマの調査権を譲り受け、今後、ロシア内外の研究者を招聘し、詳細な研究をすすめる計画だ。

予備的分析によると、このホラアナグマは2万2000年前〜3万9500年前のものとみられるが、正確な年代を特定するためには放射性炭素年代測定が必要だ。このほか、研究チームでは、分子遺伝学、細胞学、微生物学といった現代の科学的研究手法を用いて、このホラアナグマを詳しく分析していく。

最近、本土のシベリア北東部サハ共和国でも、ホラアナグマの子どもの死骸が見つかっており、研究チームは、これら2体のDNAを比較できるのではないかと期待を寄せている。

matuoka0918c.jpg

North-Eastern Federal University Yakutsk

氷河期の動物が相次いで発掘されている

地球温暖化によってシベリアの永久凍土の融解がすすみ、何万年にもわたって永久凍土の下に埋もれていた氷河期の動物が相次いで発掘されている。

2015年夏、サハ共和国で、約1万年前に絶滅したホラアナライオンの子どもが見つかったのに続き、2018年夏には、サハ共和国を流れるチレフチャフ川の土手で、約4万年前のオオカミの成体の頭部が見つかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

岸田首相、「グローバルサウスと連携」 外遊の成果強

ビジネス

アングル:閑古鳥鳴く香港の商店、観光客減と本土への

ビジネス

アングル:中国減速、高級大手は内製化 岐路に立つイ

ワールド

米、原発燃料で「脱ロシア依存」 国内生産体制整備へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元カレ「超スター歌手」に激似で「もしや父親は...」と話題に

  • 4

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 9

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 10

    マフィアに狙われたオランダ王女が「スペイン極秘留…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中