最新記事

私たちが日本の●●を好きな理由【中国人編】

日本一「日本」を伝える中国SNSの女神「林萍在日本」

2020年1月29日(水)11時00分
高口康太(ジャーナリスト)

東京、北海道、京都など各地を紹介したり、商品をPRしたりするだけでなく、商品ブランディングも手掛ける(写真は、孫が企画に携わった温泉成分配合のシャンプー「ONSENSOU」) COURTESY OF LINPING ZAI RIBEN

<「林萍在日本(リンピンツァイリーベン)」として活躍する孫竹婷は、フォロワー540万人超と芸能人並みの影響力。在日中国人インフルエンサーの中でNo.1だ。その地位に至った経緯、日本への思い、インフルエンサー業の苦労......全て聞いた。本誌「私たちが日本の●●を好きな理由【中国人編】」特集より>

「ほんの1~2年前までは取り上げたいと申し込んでも無視されてばかり。それが今では断られることがほとんどない。先日もミシュランの星を獲得した飲食店に申し込んだら、すぐにOKが出た」
20200204issue_cover200.jpg
そう話すのは孫竹婷(ソン・チューティン、36歳)。「林萍在日本(リンピンツァイリーベン)」というハンドルネームで活躍する日本在住の中国人インフルエンサーだ。商品や観光地をSNSで紹介することが主な収入源だが、依頼がなくても面白いと思った日本の情報を集めては中国のファンに届けている。

以前は取材するのも一苦労だったというが、インスタグラマーなどのインフルエンサーが市民権を得た今では反応が違う。

加えて、日本の企業や観光地にとって中国人はぜひとも来てもらいたい対象だ。日本を訪問した中国人は2019年には950万人を突破し、存在感を高めている。

magSR200128chinese-sunzhuting-2.jpg

COURTESY OF LINPING ZAI RIBEN

中国版ツイッターと呼ばれる微博(ウェイボー)で、孫のフォロワー数は540万人超。数百人はいると推測される在日中国人インフルエンサーの中で最も多く、その影響力は芸能人並みかそれ以上だ。

2019年11月に東京で開催された「微博日本群英会2019」は芸能人が多数出席したイベントだが、孫もディーン・フジオカや高橋愛ら日本の芸能人と共にレッドカーペットに登場している。

「こんなふうになるなんて思ってもみなかった。私は普通の子供だったから」

magSR200128chinese-sunzhuting-10.jpg

「微博日本群英会2019」ではレッドカーペットに COURTESY OF LINPING ZAI RIBEN

孫は江蘇省蘇州市の出身。両親は共に国有企業の従業員で平凡な家庭の出身だったという。転機が訪れたのは2008年のリーマン・ショックだった。勤務先の米系会計事務所が中国から撤退したのを機に、日本語の勉強を始めた。

「日本映画が大好き。黒沢清監督の『トウキョウソナタ』とか。字幕が付いていない日本映画も見られるようになりたいなと思って」

日本語を習得後、在中の日系メディア関連会社に転職するが、仕事の傍らで始めていたのが微博での日本情報の発信だ。

尖閣諸島問題で日中関係が悪化したのを受け、中国メディアは日本のトレンド情報発信を控えるようになった。その結果、日本カルチャーが好きな人が情報に飢えるように。こうしてメディアの代わりに日本情報を伝えるSNSアカウントがいくつも現れる。孫もその1人だった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ドル一時153円まで4円超下落、介入観測広がる 日

ワールド

再送米、民間人保護計画ないラファ侵攻支持できず 国

ビジネス

米財務省、中長期債の四半期入札規模を当面据え置き

ビジネス

FRB、バランスシート縮小ペース減速へ 国債月間最
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 9

    パレスチナ支持の学生運動を激化させた2つの要因

  • 10

    大卒でない人にはチャンスも与えられない...そんなア…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 9

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中