最新記事

宇宙ベンチャー

ポール・アレンの世界最大の飛行機、「空の発射台」として2020年運用開始

2018年8月28日(火)17時00分
松岡由希子

マイクロソフトの共同創業者ポール・アレンが創設した「ストラトローンチ・システムズ」 (c)stratolaunch

<マイクロソフトの共同創業者ポール・アレンが創設した世界最大の航空機型ローンチ・システム、定期運用予定を発表>

米国の宇宙輸送ベンチャー企業「ストラトローンチ・システムズ」は、2018年8月20日、人工衛星を宇宙空間に送り込む4種類の打ち上げ機(ローンチ・ヴィークル)について明らかにするとともに、2020年以降、これらの打ち上げ機の定期運用を開始すると発表した。

「ストラトローンチ・システムズ」は、マイクロソフトの共同創業者ポール・ガートナー・アレン氏が2011年に創設して以来、航空機型ローンチ・システムの開発に取り組んできた。

人工衛星を乗せた"巨大な航空機"が高度3万5000フィート(約1万668メートル)まで飛行し、この"上空の発射台"から打ち上げ機によって人工衛星などを軌道に送り込むのが特徴だ。2017年5月には、翼幅117.3メートル、長さ73メートルという"世界最大の飛行機"が公開され、話題を集めた。

comparison.jpg

ストラトローンチ・システムズの大きさを比較 wikipedia

(参考記事)世界最大の飛行機が初披露!空中発射プラットフォームとしてデビューへ

2020年に定期運用を開始予定

「ストラトローンチ・システムズ」の打ち上げ機のうち、最も早い2020年に定期運用を開始するのが、最大370キログラムまでのペイロード(搭載物)に対応する「ペガサス」で、これまでに35回を超える発射実験にも成功している。

このほか、3400キログラムまでに対応し、2022年の発射が予定されている中型打ち上げ機(MLV)や、最大6000キログラムにも耐えうる重量級対応中型打ち上げ機(MLVヘビー)、乗員の輸送を想定した宇宙飛行機(スペース・プレーン)の開発もすすめられている。

親機と、4種類のロケット。左から「ペガサス」「中型打ち上げ機(MLV)」「重量級対応中型打ち上げ機(MLVヘビー)」「乗員の輸送を想定した宇宙飛行機(スペース・プレーン)」(c)stratolaunch

天候の影響を受けやすく、航空交通量などとの調整も必要となる地上のロケット発射場に比べて、「ストラトローンチ・システムズ」の航空機型ローンチ・システムは、これらの外的要因を回避し、より効率的にロケットを打ち上げられるのが利点だ。同社の最高経営責任者(CEO)ジーン・フロイド氏は、「ペイロードが何であろうと、どんな軌道であろうと、航空券を予約するくらい簡単に衛星を宇宙空間に送り込める時代が間もなくやってくる」と自信を示している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

岸田首相、「グローバルサウスと連携」 外遊の成果強

ビジネス

アングル:閑古鳥鳴く香港の商店、観光客減と本土への

ビジネス

アングル:中国減速、高級大手は内製化 岐路に立つイ

ワールド

米、原発燃料で「脱ロシア依存」 国内生産体制整備へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を受け、炎上・爆発するロシア軍T-90M戦車...映像を公開

  • 4

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 5

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 6

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 7

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 7

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中