最新記事

結婚

未婚化と雇用──コロナ禍で求められる雇用の確保

2021年2月4日(木)11時30分
清水 勘(ニッセイ基礎研究所)

戦前に7割近くを占めていた見合い結婚は、その後の社会構造やライフスタイルの変化を受け、いまや1割を下回るまで低下し、その一方で、恋愛結婚が足許では9割に迫るほど上昇している。その恋愛結婚のきっかけを見ると、「職場」や「友人・兄弟を通じて」が多い(図表6)。時代の変遷と共に出会いの経路が変わるのは当然だが、その変化の方向が互助的な枠組みで成り立つ見合い結婚から恋愛結婚に向かうと、職場や友人に繋がる積極的な社会参加がより重要となってくる。前述した通り、未婚化が上昇した時期はバブル崩壊以降の失われた20年と重なり、就職を通じた社会参加が困難だった時期だ。日本独特の理由を背景に未婚化が進んだことは、バブル崩壊という日本経済の困窮を色濃く反映した結果のように思えてならない。

Nissei_Marriage6.jpg

少子化対策として動きだした雇用推進

2012年12月の第2次安倍政権発足と同時に始まったアベノミクスにより、日本経済は20年以上続いた停滞から反転し、とりわけ雇用面では就業者数が政権発足から2019年までに約500万人増加した。1997年のピークから就業者数が約320万人減少したことを考えると顕著な改善と言える。ただ、この増加分の多くを非正規雇用が占めたことは広く知られている事実だ。一貫して低下が続いてきた婚姻率も目立った反転がないまま今日に至っている。

内閣府の「子ども・子育て白書」が、非正規雇用対策の推進や若者の就労推進を少子化社会対策として盛り込んだのは2010年に遡る。2019年には「経済財政運営と改革の基本方針2019」(骨太方針2019)で、30代半ばから40代半ばとされる就職氷河期世代について、向こう3年間で正規雇用者を30万人増やすという具体的な数値目標が掲げられた。

雇用を阻むコロナの壁

その矢先に、新型コロナウイルスの感染拡大が起き、社会経済活動は突然の休止を余儀なくされている。これまで回復基調にあった就業者数も2020年11月には対前年同月比で55万人減少し、8か月連続の減少となっている。厚生労働省の発表によれば、2021年1月8日時点で新型コロナウイルス感染拡大に起因する解雇や雇い止めはその見込みを含めて8万836人に上り、その半分弱が非正規雇用労働者となっている2。非正規雇用問題は、解消どころかむしろ悪化の方向に向かいつつある。

------------------
2 厚生労働省 新型コロナウイルス感染症に起因する雇用への影響に関する情報について(1月8日現在集計分)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

神田財務官、介入有無コメントせず 過度な変動「看過

ワールド

タイ内閣改造、財務相に前証取会長 外相は辞任

ワールド

中国主席、仏・セルビア・ハンガリー訪問へ 5年ぶり

ビジネス

米エリオット、住友商事に数百億円規模の出資=BBG
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 7

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中