最新記事

認知症予防

年代別:認知症のリスクを減らすために注意すべき危険因子

HOW TO REDUCE YOUR RISKS OF DEMENTIA

2020年4月1日(水)14時30分
ニコル・アンダーソン(トロント大学心理学部教授、ベイクレスト老人医療センター付属ロットマン研究所研究員)

諸々の生活習慣に加え、ゲームや読書といった活動も認知症リスクを減らすことができる ECLIPSE_IMAGES/ISTOCKPHOTO

<発症リスクには、老いてからの食事や運動だけでなく、学業成績や職業、余暇など人生が丸ごと関わっている。本誌特別編集ムック「世界の最新医療2020」より>

多くの人は認知症について考えることを避けたがる傾向がある。自分の生活の中でまだ出会ったことがない場合は特にそうだ。しかし、認知症は世界全体で毎年990万人が診断される病気だ。これは3.2秒に1人が認知症の宣告を受けている計算になる。
202003NWmedicalMook-cover200.jpg
しかも、この数字は増えている。現在の患者数は約5000万人、2050年には1億3000万人を突破する見込みだ。

高齢者とされる65歳になるまで、行動を起こすのを控えなくていい。認知症はこれといった治療法が存在しないため、もっと早い段階で脳の健康を守る方法を考える必要がある。私の国カナダでは、1月はアルツハイマー病啓発月間だ。年齢と関係なく、このような機会を捉えて認知症のリスク低減の方法を学ぶことはとても重要だ。

私はベイクレスト・ロットマン研究所で、認知・健康・ライフスタイル上の老化の因子を研究している。どうすれば加齢に伴う認知症のリスクを低減できるかや、脳を健康に保つ方法を調べている。現在は認知症を予防するためのさまざまなタイプの認知トレーニングや、ライフスタイルへの医療介入の効果を調べる2つの臨床試験の被験者を募っているところだ。

認知症の危険因子には、私たちにはどうしようもないものが3つある。年齢、性別、そして遺伝だ。しかし、最近では私たちが注意を払うべき認知症の危険因子が幼年期、中年期、高齢期にそれぞれ存在することを示す証拠が増えている。私たち自身のためにも、子供たちの将来のためにも、この発見は重要な意味を持つ。

本題に入る前に、アルツハイマー病と認知症に関する一般的な認識の混乱について、はっきりさせておきたい。認知症とは記憶、注意力、言語、問題解決などの認知能力の低下が、日常生活に支障が出るほど深刻な状態を意味する用語だ。認知症はさまざまな病気によって引き起こされる可能性があり、そのうち最もよく見られるのがアルツハイマー病だ。

幼少期における危険因子

妊娠期間に比して低出生体重で生まれた子供は、その後に認知機能障害を経験する確率が平均よりおよそ2倍高い。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮の金総書記、新誘導技術搭載の弾道ミサイル実験

ワールド

アフガン中部で銃撃、外国人ら4人死亡 3人はスペイ

ビジネス

ユーロ圏インフレ率、25年に2%目標まで低下へ=E

ビジネス

米国株式市場=ダウ終値で初の4万ドル台、利下げ観測
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 5

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    無名コメディアンによる狂気ドラマ『私のトナカイち…

  • 8

    他人から非難された...そんな時「釈迦牟尼の出した答…

  • 9

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 10

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中