最新記事

経営

業績悪化による「賃金カット」「解雇」が認められるケースとは?

2021年10月15日(金)06時45分
加藤知美 ※経営ノウハウの泉より転載

YinYang-iStock.

<コロナ禍などで、経営が苦しくなっている企業は少なくない。しかし日本では、賃金の見直しや解雇を安易に行うことはできない。では、どんな場合は認められるのか>

新型コロナウイルス感染症が依然として猛威を振るうなか、各企業は思うように活動をすることができず、苦しい状況が続いています。

特に中小企業の場合、大企業と比較すると不景気のあおりを受けやすいことから、資金繰りに苦慮するケースが非常に多くみられます。なかには、人件費が財務上で大きな負担となっていることから、経営を再建するために、"賃金の見直し"や"解雇"を考える経営者の方も多いのではないでしょうか。

しかし、これらは安易に行うことはできません。法律に沿った形で適切に実施しなければ、法律違反として訴えられる危険性も潜んでいます。

今回は、このように業績不振の状況に置かれた場合に賃金の見直しや解雇ができるのか、また妥当な減額の基準や実際の対応方法について、順を追って解説をしていきます。

業績不振の背景

始めに、どのような状況で企業が業績不振に陥るのかを整理しましょう。業績不振とは、その名の通り会社の業績が振るわず、利益をあげることができない状況をいいます。

業績不振に陥る要因には、対外的な原因と社内体制に原因があります。

対外的な原因としては、社外での取引が新たなライバル企業の出現、代替となる商品が展開されることにより縮小される場合が挙げられます。また、不景気による流通の鈍化もその一つで、特に昨今ではコロナ禍のもとでこれまで通りの企業活動ができず、泣く泣く取引を諦めているケースが非常に多くみられています。

社内体制に原因がある場合は、職場環境や社内体制に問題があり、社員のモチベーションが上がらないことがあります。具体的には、社員教育や営業活動のノウハウが浸透していないケースや、上司や部下、同僚同士のもめ事が絶えないケースなど、"人"を要因とする内容が挙げられます。

また、明確な財務計画や予実管理に問題がある場合など、経営計画を要因とする場合もあるでしょう。賃金体制に問題があるケースもこれに該当します。

業績悪化による賃金カットは許されるか

それでは、業績がふるわないことを理由に社員の賃金をカット、つまり減額することは認められているのでしょうか?

賃金は、会社と社員との間で交わす雇用契約の中でも、もっとも重要なものになります。したがって、たとえ業績が悪化したからといって、一方的にその賃金額をカットすることは認められていません。

社員は会社のために労務を提供することで、賃金を受け取ります。この賃金が満足に支給されないと、社員の生活に支障をきたすことになるためです。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

中国、日米欧台の工業用樹脂に反ダンピング調査 最大

ワールド

スロバキア首相銃撃事件、内相が単独犯行でない可能性

ビジネス

独メルセデス、米アラバマ州工場の労働者が労組結成を

ビジネス

中国人民元建て債、4月も海外勢保有拡大 国債は減少
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 7

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 8

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 9

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 10

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中