ストロング系の好調に酔えない大手ビール会社 健康志向で低・ノンアルコールへシフト
メーカー側は、アルコール度数とともにグラム量の表示を段階的に進めている。これは、3月に閣議決定した「アルコール健康障害対策推進基本計画」の中で求められたもので、政府関係者は「グラム表示が進めば、販売している商品との矛盾が明らかになる。抑止策につながることを期待している」と話す。
高アルコールから低アルコールへ
ビール大手4社は、現段階で「消費者のニーズはある」として「ストロング系」の取りやめには至っていない。ただ、一時のように強く消費を促すことはやめている。
キリンビール(東京都中野区)の布施孝之社長は、高アルコール製品への需要は高く、ブランドとしても存在するが「アルコール問題を助長するコミュニケーション(広告活動)は一切やらない」と、慎重な取り扱いをしているという。「資源を集中したり、コスパが良いなどの広告表現は一切せずにケアしながら売っている」と説明する。
キリンでも、現在最も売れ筋の「氷結無糖」は4%のアルコール度数となっている。
アサヒビールは「スマドリ(スマートドリンキング)」を提唱、お酒を飲めない人に加え、あえて飲まない人を合わせた4000万人をターゲットにして商品を投入。2025年までに度数3.5%以下の商品の比率を20%にする計画だ。
松山一雄専務は「スマートドリンキングを推進する中で、高アルコールは避けては通れない課題だと認識している。中長期的に高アルコールにどう取り組んでいくかは、議論をしている」という。現時点では、商品の取りやめの判断は行っていないものの「度数が低くても十分魅力ある大人向けの飲料は開発できると思っている。今後出していく新商品は、できる限り高アルコールの領域ではないもので、魅力ある商品を出していくことで徐々にそちらの方の消費が増えていく世界が実現できればいいと思う」とし、徐々に舵を切る方針を示している。
オリオンビールは、沖縄の素材を用いた商品などの首都圏販売にも乗り出した。高アルコールチューハイの販売を取りやめた後、20年5月からの1年間で「WATTA」シリーズの売上高は65%増となった。低アルコールの品揃えを拡充して、今年は3倍の拡大を狙う。
「一部消費者からは残念という声もあったが、9割は支持の声だった」。こうした会社の姿勢と消費者の支持は、今後、大手企業の方針転換の後押しとなるかもしれない。
清水律子
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