最新記事

ウォール街

年金ハイリスク運用のコストをひた隠す州政府

年金受給者の不安をよそに、ファンドマネージャーは高額の手数料と報酬を稼ぐ

2014年7月31日(木)19時26分
デービッド・シロタ

1%の勝ち組 破綻寸前の年金制度を何とか持たせようと、高リスクの運用方針を打ち出す自治体。それによって得するのは誰か BigStock

 全米の多く州の例に漏れず、ロードアイランド州もここ数年、年金基金の一部を高リスク投資に回すようになった。その比率はどんどん高まり、州当局はウォール街のファンドマネージャーに高額の手数料を支払って運用を委託している。州最大手の新聞社が7月、その実態を納税者に知らせるため、運用契約の情報開示を求めたが、州当局はこれを拒否した。

 カリフォルニア、ペンシルベニア、ノースカロライナ、ケンタッキー州なども同様の情報開示に応じていないが、ロードアイランド州当局は開き直りとも取れる理由を挙げて開示請求を突っぱねた。州の年金資産の運用でいくら稼いでいるかが公になれば、ファンドマネージャーたちの身の安全が危ぶまれるというのだ。

「ファンドマネージャーはスタッフの生産性を維持し、自分たちの受け取る報酬への注目を最小限にするために、この情報を部外秘扱いにしている」と、ロードアイランド州のジーナ・ライモンド財務官は書簡で述べている。ライモンドは民主党員で、ロードアイランド州当局から資産運用を委託された複数の会社のうちの1社の創業者でもある。

 州財務官事務所からマイケル・フィールド州法務次官補に宛てたこの書簡は「不開示の根拠となる説明」を詳述したもの。その中でライモンドは、03年に投資家のエドワード・ランパートが身代金目的で誘拐された事件を例に挙げ、ヘッジファンドの手数料や報酬額が公表されれば、同様の事件が起きかねないと主張している。

 こうした秘密主義に対し、透明な行政運営求める政治家や労働組合、市民団体が一斉に抗議の声を上げている。ファンドマネージャーたちは州の選挙で多額の献金を行い、州当局から有利な契約を得ているとして、ライモンドとウォール街の癒着を指摘する声もある。

 ライモンドは11年に財務官に就任すると、すぐさま年金資産の高リスク運用の先鞭をつけた。ロードアイランド州当局が運用会社に払う手数料コストが増え始めたのもこの時期からだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中