コラム

脱原発と排出ガス削減をめぐる、日本の2つの選択肢

2019年12月12日(木)17時00分

このため政府の方針としては、緊急避難的に火力、特に石炭火力への依存が拡大しているのです。また輸出をしているのは、原発ビジネスが大きく狂ってきている重電メーカーを救済するためです。

小泉大臣としては、今回のCOP25という場では、「日本を代表して頭を下げつつ、石炭火力依存の方針は変えられないことを言明する」という方法しか取りようがなかったということだと思います。

しかし、日本のエネルギー供給については、本当はもう1つ選択肢があります。

それは、あらためて石炭火力依存への国際的な非難を深刻に受け止め、同時に日本が気候変動による甚大な被害を受けつつあることを前提に、安全基準をクリアした原子炉を再稼働させるという考え方です。これによって、再生可能エネルギー比率を高めるまでの期間も、排出ガスを抑制することができる、つまり過渡的に時間を稼ぐことが可能になります。

ですが、小泉大臣はこの選択肢には乗りませんでした。正論であっても、政治的に成立しないという計算があったのでしょう。そうであるなら、いかに格好が悪くても、石炭依存政策から脱する考え方には至らなかった、そう告白するしかなかったというわけです。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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