Picture Power

【写真特集】過疎化が招くスペインの山火事と生活破壊

EMPTY LAND

Photographs by ADRA PALLÓN

2023年08月15日(火)12時00分

91歳のオルガはスペイン北西部ルーゴ県の村で独り暮らしをしていた。だが都会に住む息子が高齢の母を心配し、1カ月前から同居してくれるようになった(2022年5月)

<老人だけが残された村々では、木材や製紙原料となる燃えやすいマツやユーカリが大量に植林されている>

私はスペイン北西部ルーゴ県を拠点に、過疎化と環境問題の関係を調査するプロジェクトに取り組んでいる。

過疎化が始まったのは1960年代頃。それ以前はほとんどの土地は農地であり、周囲に広がる自生の森林は山火事を食い止める防火帯としての役割を果たしていた。

ppfire-map.jpg

だが村々で過疎化が進むと老人が残されて、人口構成だけでなく、土地の構成も変わった。耕作放棄地に政策の後押しを受けた林業者が入り、木材や製紙原料の調達のためにマツやユーカリを大量に植林。共に燃えやすい樹木で、つまり過疎化と山火事は密接につながっている。

今回の撮影地であるルーゴ県は欧州の中でも、山火事が頻発する地域だ。大企業は住む人のいなくなった土地への植林や風力発電所設営を狙い、防火帯や農地が消失している。

零細農家による長年の伝統的な営みは、環境と調和していた。だが強欲な市場がそれに終わりを告げ、こうした環境問題を引き起こしている。

――アドラ・パジョン(写真家)

ppfire02.jpg

ア・フォンサグラダの村にある住宅と農場。1、2軒の家を核にした領地が数キロごとに点在する独特な土地柄だ(22年2月)

ppfire03.jpg

ホセ(87)は姉の面倒を見ながらルーゴ県アンカーレスに暮らす。「若い頃は孤独でふさぎ込み、病気にもなった。みんな村を出て、結婚相手もいない」。毎日の楽しみは牛との散歩だ(22年5月)

ppfire04.jpg

カストロ・デ・レイの町に独りで暮らすサルバドル。高齢のため体の自由が利かず、階段を下りるのにも一苦労(22年6月)

ppfire05.jpg

朝目覚めて、床に足を下ろす90歳のアリシア(21年7月)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ノババックス、サノフィとコロナワクチンのライセンス

ビジネス

中国高級EVのジーカー、米上場初日は約35%急騰

ワールド

トランプ氏、ヘイリー氏を副大統領候補に検討との報道

ビジネス

米石油・ガス掘削リグ稼働数、3週連続減少=ベーカー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    横から見れば裸...英歌手のメットガラ衣装に「カーテ…

  • 7

    ウクライナの水上攻撃ドローン「マグラV5」がロシア…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 9

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story