コラム

「世界一自転車フレンドリーな都市」コペンハーゲンに学べること

2021年11月26日(金)19時15分
コペンハーゲンの自転車のある風景

コペンハーゲンでは、安心して自転車に乗れる道路づくりが徹底されている Ole Schwander-iStock

<クルマや公共交通を使うよりも自転車の方が便利。各国の政策担当者が学びに訪れるコペンハーゲンの自転車政策とは>

数ある移動手段の中でも、まったくCO2を排出しない移動手段は徒歩や自転車に限られる。2025年にカーボンニュートラルを目指すデンマークは、その一つの目玉として自転車の活用を据えている。

オリンピックで自転車を活用するフランスのパリやオランダが着目されるが、デンマークの首都コペンハーゲンは世界でもっとも日常生活に自転車を活用した街づくりをしている都市だ。

現地の専門家によると、CO2削減が叫ばれる中、自転車用のインフラを整備したり、推奨するキャンペーンを展開しているという。

各国から政策担当者らが学びに来る

自転車問題に取り組む人々の間で大事にされている指標を「コペンハーゲン化指数(Copenhagenize index)」と言う。2年おきに調査が行われ、自転車フレンドリーな街のランキングが発表される。

調査が始まった2011年のランキングを見ると、1位はアムステルダム、2位がコペンハーゲン、3位バルセロナ、4位ベルリン、5位東京、6位ミュンヘン、7位パリ、8位モントリオール、9位ダブリン、10位ブダペストとなっている。

2019年には1位にコペンハーゲン、2位がアムステルダム、3位ユトレヒト、4位アントワープ、5位ストラスブール、6位ボルドー、7位オスロ、8位パリ、9位ウィーン、10位ヘルシンキとなっており、東京は16位と順位を落としている。

このランキングを見ると分かるように、コペンハーゲンとアムステルダムが競り合っており、2015年と2017年にもコペンハーゲンに軍配が上がっている。

kusuda211126_copenhagen_2.jpg

筆者撮影

アムステルダムとも違う

コペンハーゲンには各国の政策担当者が自転車政策を学びにやってくる。

デンマークの自転車政策のノウハウを世界に共有することを目的に活動する、デンマーク・サイクリング・エンバシーは毎年約1週間にわたってコペンハーゲンで「バイカブルシティマスタークラス」という集中講義を行っている。都市開発とサイクル計画、政治プロセス、サイクリングスーパーハイウェイとグリーンサイクルルート、交通安全および事故の削減、子供へのサイクル教育、公共交通との連携、都市デザインなど体系的に学ぶことができる。

筆者が参加した2018年は、スイス、ドイツ、イギリス、スペイン、シンガポール、アメリカ、フランス、チリ、オーストラリアなどの政策担当者らがコペンハーゲンに集まった。

プロフィール

楠田悦子

モビリティジャーナリスト。自動車新聞社モビリティビジネス専門誌『LIGARE』初代編集長を経て、2013年に独立。国土交通省の「自転車の活用推進に向けた有識者会議」、「交通政策審議会交通体系分科会第15回地域公共交通部会」、「MaaS関連データ検討会」、SIP第2期自動運転(システムとサービスの拡張)ピアレビュー委員会などの委員を歴任。心豊かな暮らしと社会のための、移動手段・サービスの高度化・多様化とその環境について考える活動を行っている。共著『最新 図解で早わかり MaaSがまるごとわかる本』(ソーテック社)、編著『「移動貧困社会」からの脱却 −免許返納問題で生まれる新たなモビリティ・マーケット』(時事通信社)、単著に『60分でわかる! MaaS モビリティ革命』(技術評論社)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 4

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 5

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 9

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 10

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story