コラム

日韓関係は歴史と感情の自縄自縛

2021年06月25日(金)15時15分

韓国の運動家は、東洋の古い習わしに従って、「罪を犯した日本一家」を未来永劫、世界の賎民扱いにしたいのだろうが、そうはいかない。日本の過去は現代の国際法にのっとって前述の基本条約で清算してある。それに、日本は当時の金で50億ドル以上と推計される資産を朝鮮半島に残し、基本条約でそれに対する請求権を放棄してもいるのだ。

しかし日本人も、ただ韓国を罵るだけでは徳がない。歴史の行き掛かりとはいえ、大きなトラウマを韓国の人々に残したことへの心の傷み、同じようなことを繰り返さないという人間としての決意は持たなければならないし、それができるだけの歴史教育もしないといけない。

日韓は民主主義体制を共有するが、対中関係などでは置かれた境遇が違う。完全な提携は今後もないだろう。しかし、関係のねじれが経済関係断絶や武力攻撃に至ることがないよう、関係をうまく管理していくことは絶対必要だ。今や日韓両国は、互いが射程に入り得るミサイルを入手しつつある。感情的対立のエスカレーションは危ない。

「過去に憑(つ)かれた世代」は、これから去っていく。両国民とも豊かになった。両国首脳が折に触れて会い、関係を前向きに進めていくことを、今後の目標にすべきだ。

(※韓国は変わったのか――。本誌6月29日号「ファクトチェック 韓国ナゾ判決」特集では、次期大統領選が近づく韓国で相次いだ慰安婦問題・徴用工問題の「ナゾ判決」を検証。2021年の日韓関係を探った。木村幹・神戸大学教授ほか執筆)


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プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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