コラム

「核心」化する習近平

2016年02月04日(木)16時00分

政権の安定のために

 今日、如何なる国家であっても、その舵取りは最高指導者だけではできない。最高指導者は他の政権指導部のメンバーと協働する必要がある。中国でも同じだ。習近平は他の政治指導者から忠誠を獲得するためには、彼らに安心を提供しなければならない。さもなければ政権を担うメンバー間の関係は不安定化する。さもなければ宮廷クーデターが起きるかもしれない。安心供与の最も的確なやりかたが人事制度である。最高指導者が恣意的に人事を動かすことがないことが制度的に保障されていれば、人々は安心して業務に励むことができる。定年制や任期制の厳格な運用が期待されているのはそのためだ。

 中国の政治指導部は、文化大革命のような政治的混乱の再演を避けるために、1980年代以降、「定年」をはじめとする人事制度をセットし、厳格に運用してきた。それは政治指導部の団結と安定の維持に貢献してきた安定装置でもある。習近平は、この制度に手を加えることはできるのだろうか。

 できるのかもしれない。しかし、もちろん権力と権威の個人への集中と強化が、政権の安定の持続を無条件で意味するわけではない。

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プロフィール

加茂具樹

慶應義塾大学 総合政策学部教授
1972年生まれ。博士(政策・メディア)。専門は現代中国政治、比較政治学。2015年より現職。国際大学グローバル・コミュニケーション・センター客員研究員を兼任。國立台湾師範大学政治学研究所訪問研究員、カリフォルニア大学バークレー校東アジア研究所中国研究センター訪問研究員、國立政治大学国際事務学院客員准教授を歴任。著書に『現代中国政治と人民代表大会』(単著、慶應義塾大学出版会)、『党国体制の現在―変容する社会と中国共産党の適応』(編著、慶應義塾大学出版会)、『中国 改革開放への転換: 「一九七八年」を越えて』(編著、慶應義塾大学出版会)、『北京コンセンサス:中国流が世界を動かす?』(共訳、岩波書店)ほか。

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