最新記事

メンタルヘルス

「食べることがやめられない」...心の病気に苦しむ母を救えなかった私の後悔

I Couldn’t Understand My Mom

2024年03月09日(土)11時35分
シェリー・ペイジ・ガイアー(看護師、ライター)
シェリー・ペイジ・ガイアー

健康関連の記事を執筆しながら博士課程で学ぶガイアー SHERRIE PAGE GUYER

<もしもあの頃に適切な治療薬があったなら...。母が患っていたのはBEDという精神疾患だった>

「そりゃね、たくましいゲルマン民族の血を引いてるから」

病的なほど太っていた母は、よくそう言っていた。「ラバが倒れちまったら、昔の人は代わりに自分で犁を引いて畑を耕したものさ」

だから母も体が大きいんだと、最初は思っていた。でも、少ししたら気付いた。ハロウィーンとか復活祭のキャンディーが、一晩で消えてしまう。クリスマスのクッキーも、来客用に焼いた特大のケーキも、私たちが食べる前に全部なくなっていた。

母にとって、甘いものは麻薬だった。母の車の運転席の下はキャンディーの包み紙でいっぱいだった。朝早くに起き出して、前の晩に食べ尽くしたクッキーやアイスクリームを買い足しに行く姿も目にしていた。

幼い頃は、その話はしちゃいけないと思っていた。秘密には触れないのが一番と信じ、黙っていた。みんな気付かないふりをし、母も気付かれていないふりをしていた。

でも中学生の時、両親が離婚し、環境が変わった。父と弟は遠くに引っ越してしまい、私は母と、母の過食に向き合わなくてはならなかった。

真の姿をさらした母

高校生になると、母を問い詰めるようになった。「チアリーダーの謝恩会用に焼いたケーキ、どうしちゃったの?」。答えは分かっていたけど、言わずにいられなかった。

その頃の私は、学校で人気者になりたくて必死だった。みんなに受け入れてもらいたくて、ひたすら明るいチアリーダーを演じていた。母はあきれていた。一方で私は、まだ気付いていなかった。実は母も私と同じで、周囲の人に受け入れてもらいたい一心なのだということに。

ある日、買い物に行く母に私は言った。そこのスーパーに写真の現像を頼んであるから受け取ってきて、と。

夕方、帰ってきた母の買い物袋を開けてみたが、写真がない。なんで、と私は叫んだ。

母は青ざめ、無言で私を車に乗せ、近くの建設現場まで行って、大型のゴミ箱を指さした。ふたを開けると一番上にスーパーの袋があり、中に大きなドーナツの空箱2つと、私の写真が入っていた。

そう、母はまだ私を愛してくれていた。だから大事な写真を取り戻してくれた。あえて自分の、真の姿をさらしてまで。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ハマス代表団、停戦協議でカイロへ 米・イスラエル首

ビジネス

マスク氏が訪中、テスラ自動運転機能導入へ当局者と協

ワールド

バイデン氏「6歳児と戦っている」、大統領選巡りトラ

ワールド

焦点:認知症薬レカネマブ、米で普及進まず 医師に「
今、あなたにオススメ

RANKING

  • 1

    「自由すぎる王族」レディ・アメリア・ウィンザーが「…

  • 2

    ウィリアム王子の「変な踊り」が話題に...女王代理の…

  • 3

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 4

    ミーガン・フォックスの「すっぴん」に「誰これ?」..…

  • 5

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 1

    ミーガン・フォックスの「すっぴん」に「誰これ?」..…

  • 2

    メーガン妃から「ロイヤルいちごジャム」を受け取っ…

  • 3

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 4

    ウィリアム王子の「変な踊り」が話題に...女王代理の…

  • 5

    サッチャーから気鋭の記者まで演じ、「Gスポット」を…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    メーガン妃は「努力を感じさせない魅力がお見事」とS…

  • 3

    エリザベス女王が「誰にも言えなかった」...メーガン…

  • 4

    キャサリン妃とメーガン妃の「本当の仲」はどうだっ…

  • 5

    メーガン妃から「ロイヤルいちごジャム」を受け取っ…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:世界が愛した日本アニメ30

特集:世界が愛した日本アニメ30

2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている