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祖先から引き継いだ衝動? 若者の危険行動は生存本能かもしれない

Teen Risk-Taking:A Good Thing?

2019年11月06日(水)17時40分
ニューズウィーク日本版編集部

死と隣り合わせの体験をしなければ未来の安全は手にできない!?(写真はイメージ) Django-iStock

<人間の若者は無謀運転をし、ラッコはサメに向かって泳ぐ──若い世代に共通する無謀な行為には理由があった>

ティーンエージャーの若者たちは、大人からすれば思いもよらないむちゃをしでかす危なっかしい生き物だ。彼らが危険な行動に走るのは反抗心からなのか。それとも脳や判断力が未熟だからだろうか。

べストセラーとなった『人間と動物の病気を一緒にみる── 医療を変える汎動物学の発想』の著者バーバラ・ナターソン・ホロウィッツとキャスリン・バウワーズは、若い野生動物に関する5年間にわたる研究を基に、新著『Wild hood(野生とは)』で若者は危ない行動をするようプログラミングされていて、それには十分な理由があると説く。以下はその抜粋だ。


青年期の人間は、大人と比べて大きなけがをしがちだし、死亡率も高い。この年代の死因で最も多いのは、自動車事故や銃の暴発、転落、水難、中毒といった事故だ。

若い人が車に乗ると大人よりもスピードを出すし、シートベルトはさぼりがち。犯罪率は全ての年代の中で最も高く、殺人事件の犠牲になる確率も35歳以上の成人の5倍に達する。急性アルコール中毒での死亡率もしかりだ。

そこで私たちは、野生動物の世代別の死亡率の比較調査を試みた。すると、人間のティーンエージャーに当たる世代の動物の生活も、人間の若者同様に危険が多いことが判明した。衝突したり溺れたり飢えたりして死ぬことが多いし、自分より体格のいい成獣との生存競争は経験不足ゆえに非常に厳しいものとなる。肉食獣からも狙われやすい。

スリルを追い求める理由

毎年、南極大陸周辺の海では数多くのオウサマペンギンの若鳥が巣立つ。だが彼らを待つのはアザラシやシャチといった天敵であり、十分な餌が取れるとは限らない厳しい環境だ。年によっては若鳥の半数が死に追いやられる。

野生動物の若い個体には経験不足という共通の特徴があり、それ故に自らを危険にさらすような行動を取ってしまう。野生生物の専門家が言うように、こうした無防備で疑うことを知らない若い個体には、捕食者に対する経験が欠けているのだ。

だからこそ捕食者経験の足りないリス科のウッドチャックは、たとえコヨーテが近くにいても隠れる様子もなくはしゃぎ回る。若いラッコはホオジロザメから逃げるどころか、わざわざそちらに向かって泳いでいったりする。

外の世界に踏み出したばかりの人間の若者もまったく同じだ。慣れない飲み会に行ったり都会暮らしを始めて、コヨーテやサメに負けず劣らずの危険に直面する可能性がある。急ハンドルを切るトラックに、新人に無理やり酒を飲ませる先輩、若者を食い物にする大人たち......。

つまり成長途中の若い個体が死の危険に直面するのは、種の違いを越えて避け難いことらしい。生き延びたいなら捕食者との経験を積む必要があるし、リスクを冒さなければ将来の安全は得られない。

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