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女を潰すのは女──海外版お局様「女王蜂」と呼ばれる女性管理職のパワハラ心理

2019年01月22日(火)16時30分
岩澤里美(スイス在住ジャーナリスト)

日本にも拠点がある人材育成コンサルティング組織のAMA(アメリカン・マネージメント・アソーシエーション) も、働く女性1000人に聞いたところ(2011年実施)、95%が「キャリアのいずれかの段階でほかの女性社員にハラスメントされたと感じている」と明らかにしている。アメリカを中心に世界のキャリア志向の女性たちが会員でイベントも開催しているネットワーク、エレベート・ネットワークの会員アンケートでは、50%以上がクイーン・ビーからいじめられたと回答した。

アリゾナ大学エラー経営カレッジのアシスタントプロフェッサー、アリソン・ガブリエルさんたちの調査(フルタイムの男女社員を対象、2018年出版)でも、女性たちは男性にハラスメントされるより、女性にハラスメントされる割合が高いという結果だった。

職場の性差別が関連している可能性も

クイーン・ビー現象の話になると、「女性同士のライバル意識の強さ」「女性は目立つ女性やがんばっている女性を嫌う」と解釈する人が多い。これに対し、クイーン・ビー現象に詳しいオランダ・ユトレヒト大学のベル・ダークス教授は、ほかの女性のキャリアの成功を邪魔するのは女性の一般的な性質だからではなく、職場に強くある性差別・性的なステレオタイプが要因だろうと分析する。

性差別が歴然と存在する職場とあまりない職場の様子を比較すると、性差別が明らかな職場の方がクイーン・ビーの現象が多く見られたという。そういう職場には、男女の給与格差があったり、女性は経営陣や重要なポジションに加わらなくてもいいという見方があったりする。そのため、昇進したい女性は男性と同様に扱ってもらえないことを負い目に感じ、男性に同化して男性的であろうと努め、職場の性差別に合わせるようになる。上のポジションに就くと、自分はほかの女性とは違うからとキャリア志向の後輩女性たちと距離を置くようになるのだという。

ダークス教授はほかにも要因を挙げている。「働く際に女性であることは自分には大切ではない」「女性社員みんなとつながっていると感じていない」というように、女性であることを強く意識していないと、クイーン・ビーになりやすい可能性があるという。

ただし、意欲的にほかの女性をサポートしている女性も、もちろんいる。こちらの調査では、MBA(経営学修士)の資格をもってフルタイムで企業に勤める女性の73%の女性が、ほかの女性をサポートしていた。

おそらく一筋縄ではいかないとは思うが、クイーン・ビー現象を解消するには企業側も女性側も意識を変えていかないといけないのだろう。


s-iwasawa01.jpg[執筆者]
岩澤里美
スイス在住ジャーナリスト。上智大学で修士号取得(教育学)後、教育・心理系雑誌の編集に携わる。イギリスの大学院博士課程留学を経て2001年よりチューリヒ(ドイツ語圏)へ。共同通信の通信員として従事したのち、フリーランスで執筆を開始。スイスを中心にヨーロッパ各地での取材も続けている。得意分野は社会現象、ユニークな新ビジネス、文化で、執筆多数。数々のニュース系サイトほか、JAL国際線ファーストクラス機内誌『AGORA』、季刊『環境ビジネス』など雑誌にも寄稿。東京都認定のNPO 法人「在外ジャーナリスト協会(Global Press)」理事として、世界に住む日本人フリーランスジャーナリスト・ライターを支援している。www.satomi-iwasawa.com

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