Picture Power

【写真特集】驚きと躍動と謎に満ちた野生の世界

HERE'S MOTHER NATURE

Photographs by 2021 Wildlife Photographer of the Year

2021年10月30日(土)15時30分

「水面下」部門 『創造』/ローラン・バレスタ(フランス) Laurent Ballesta/2021 Wildlife Photographer of the Year

<野生生物が生み出すこの世を超越した美>

フランス領ポリネシアのファカラバ島の環礁には年に1度、7月の満月の頃に無数のマダラハタが集結し一斉に産卵する。その珍しい瞬間を捉えた作品が、第57回野生生物写真コンテスト英ロンドンの自然史博物館が運営・審査)の今年の大賞に選ばれた。

『創造』と題した1枚に写るのは雲状に広がる卵と精子、3匹のマダラハタ。撮影者はフランスの水中写真家で生物学者のローラン・バレスタだ。ロザムンド・キッドマン・コックス審査委員長は「意外で、エネルギッシュで、興味をそそり、この世を超越した美がある」と評した。「放出された最後の卵がクエスチョンマークのように残る、神秘の瞬間を捉えてもいる。強力な生命の創造の瞬間だ」

今年は10月中旬に国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)が、10月末からは国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が催される。そんな今、人類が変わらなければ何を失うことになるのか、『創造』は説得力をもって訴える。

以下に紹介するのは、同じく驚きに満ちた自然界の一瞬や光景を写し、各部門で1位となった作品たちだ。

<冒頭写真の解説>
雲状に広がる卵と精子とマダラハタ。仏領ポリネシアのファカラバ島の環礁では7月の満月の頃、無数のマダラハタが一斉に産卵する。ローラン・バレスタと彼のチームは5年間にわたり環礁を訪れ、昼夜問わず海に潜ってその瞬間を待った。この環礁はユネスコ(国連教育科学文化機関)の生物圏保護区であり、乱獲に脅かされる絶滅危惧種のマダラハタも安全だ。


nature02.jpg

「動物の肖像」部門 『沈思』/マジェド・アリ(クウェート)
雨の中、目を閉じるマウンテンゴリラの「キバンデ」。40歳近いこのゴリラに会うため、マジェド・アリはブウィンディ国立公園(ウガンダ)を4時間トレッキングした。アリいわく「上へ行くほど蒸し暑くなり、降り始めた冷たい雨をキバンデは楽しんでいるようだった」。ブウィンディとビルンガ国立公園(コンゴ民主共和国)に生息するマウンテンゴリラは絶滅の瀬戸際にある。Majed Ali/2021 Wildlife Photographer of the Year


nature03.jpg

「湿原─大局的」部門『 破滅への道』/ハビエル・ラフエンテ(スペイン)
曲線の多い湿原の風景をすっぱり貫く直線道路。ラフエンテはドローン(無人機)を使い、カメラを傾けて撮影することで、水面に反射する日光と常に変化する光という難題に対処した。ビーチへ行くために1980年代に建設されたこの直線道路は、100種以上の鳥類の生息地である干潟を分断してしまった。Javier Lafuente/2021 Wildlife Photographer of the Year


nature04.jpg

「行動:無脊椎動物」部門 『ゆりかごを紡ぐ』/ギル・ワイゼン(イスラエル/カナダ)
剝がれかけた樹皮の下で、ハシリグモが卵嚢を作っている。「糸を出す糸いぼの動きは織物をする人間の指を思わせた」とギル・ワイゼンは言う。ハシリグモは米北東部の湿地や森林に生息し、孵化するまで卵嚢を持ち歩く。1つの卵嚢に750個以上の卵が入っていた記録も。Gil Wizen/2021 Wildlife Photographer of the Year


nature05.jpg

「10歳以下」部門 『ドーム型の家』/ビディウン・R・ヘバル(インド)
巣の中のスズミグモを捉えたこの1枚は、背後のトゥクトゥク(三輪タクシー)の色が美しく効果的。スズミグモは脚の長さが1.5センチほど。巣は粘着性がなくて網目が四角形のドーム状だが、毎日新たに作るのではなく修復を重ねていくのだという。Vidyun R Hebbar/2021 Wildlife Photographer of the Year

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 7

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 8

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 8

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story