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England Swings!

ラッシャー貴子|イギリス

コロナ禍の食事情あれこれ

家にいる時間が増えて、料理に凝る人もぐっと増えた。最初のロックダウンでは家でパンやケーキを焼く人(または念のため手元に置いてきたい人)が増えて、小麦粉がなかなか手に入らなくなった(日本も同じだったそうですね)。パン焼き器やパスタマシンも品切れが出るほど売れたそうだ。ちなみに英国の場合、小麦粉の在庫は実はたっぷりあったそうだ。ただあまりに飛ぶように売れたので袋詰めが間に合わなくて売りに出せなかったらしい。去年の夏ごろには時々5キロ入り、10キロ入りの豪快な大袋を見たことがあり、その存在感に圧倒された!

もともと料理好きの夫もロックダウンをきっかけにますます料理熱が高まり、新しいレシピをじゃんじゃん試してはフラット(集合住宅)のご近所さんにせっせとおすそ分けしている(徒歩圏内に知り合いがいるありがたさよ)。するとお返しにと、いろいろな手料理をいただくことが増えてきた。インドのおばあさんの手作りダールカレー、イラン出身の女性が焼いた本場ペルシャの平べったいパン、大人気のパスタマシンを早くに手に入れたご近所さんの手打ちパスタなどなど。

pasta.jpg

(夏に規制が緩んだ時、ご近所さんにパスタを作るところを見せてもらった。この頃にはもうすっかり慣れたもので、あっという間にパスタを生み出していく彼女。この日はわたしも作らせてもらって、2人でご近所に配りまくった。著者撮影)

コロナ禍で不便なことは本当に多いが、食生活とご近所づきあいに限って言えば、これまでより充実しているのかもしれない。同じフラットとはいえ、同居していない人と屋内で集まることはできないので、ただ建物の外で食べものを渡すだけなのだが、閉じこもりがちなロックダウン生活では、このちょっとした交流が貴重でありがたい。あとで電話やメールで話が盛り上がることも含めて。

ロックダウン真っ只中のある日、特に親しくしているカナダ人夫妻からメッセージがあった。食べることが大好きな彼らはわが家の食べ歩き仲間、夫の料理仲間でもある。「今週の金曜、予定空いてる? 一緒にご飯食べようよ」どこにも外出できないから空いているに決まっているのだが、一緒にご飯なんて食べられないのに。そう思っていると、すぐに次のメッセージ。「というのは冗談。料理セットをとって同じ時間に食べようよ」よくよく聞いてみると、こういうことだった。最小限の調理で済むディナーセットを売るレストランを見つけたので、同じ日に届けてもらって一緒に食べているつもりでそれぞれの家で食事しよう、という提案だったのだ。これはおもしろい! ロックダウンならではのアイディアじゃないかな。同じところからテイクアウトしてもいいけれど、こうすれば料理も少し楽しめる。もちろんわたしたちは大賛成した。

当日に届いたのは3コースディナー2人分の食材で、前菜がサーモンのパテとパン、メインがチキンのクリームソースとポテト、デザートがチョコレートケーキのクロテッドクリーム添えというメニューだった。メイン料理の上にぱらぱらふりかけるハーブにいたるまで少しのもれもなく食材すべてが含まれていて、もちろん料理法もしっかり添えてある。必要だったのは鶏肉をフライパンで焼いてソースを温めることだけ。あとは盛り付けるのみだった。

別棟に住む彼らは魚のセットにしたそうで、写真を送りあって、味のコメントをしながら食べようと楽しみに夕食の時間を待っていたら......なんとレストランの手違いで友人宅にはその日に食材が届かなかった! ネットショッピングの普及でずいぶん改善されたとはいえ、ヨーロッパの宅配は日本の基準よりずいぶんのんびりしているのだ。なんとも英国らしい結末に4人で大笑い。これもいつまでも忘れられない思い出になりそうだ。

リックスタイーン.jpg(食材がすべてそろったディナーセット(紙のメニューつき)はRick Stein(リック・スタイン)という英国人セレブシェフの店のものだった。著者撮影)
 

Profile

著者プロフィール
ラッシャー貴子

ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。

ブログ:ロンドン 2人暮らし

Twitter:@lonlonsmile

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