最新記事
中国漁船

1日平均300隻が「襲来」、EEZ内で違法操業する中国漁船を韓国沿岸警備隊が拿捕

US ally seizes Chinese vessels

2024年4月4日(木)15時14分
マイカ・マッカートニー

港に停泊する中国漁船(2月8日、浙江省舟山) Photo by Costfoto

<遠洋漁業に携わる漁船数が世界一の中国漁船が、他国のEEZ内で稚魚までかっさらう漁業を続ければ、魚を盗まれた国の漁業だけでなく世界の海洋資源を危機にさらす>

韓国沿岸警備隊が3月下旬、韓国の排他的経済水域(EEZ)で違法に漁業を行っていた疑いで、中国の船舶5隻の船舶を押収し、乗組員数人を中国に送還した。韓国海洋水産部とパトロール中に発見した。

【動画】韓国海警、違法操業の中国漁船に初の機関銃700発使用

排他的経済水域とは、沿岸国が海岸線から200海里(約370キロメートル)以内で設定できる水域であり、沿岸国はここでの天然資源の探査・開発などについて独占的な権利を有すると国連海洋法条約で規定されている。

 

違法・無報告・無規制(IUU)漁業は、世界の海洋資源や海洋生態系、そして合法的な漁業者の生活に大きな害をもたらしている。遠洋漁業に携わる漁船の数が世界で最も多い中国は、IUU漁業を行う漁船も多く問題になっている。

韓国の日刊紙「中央日報」は、沿岸警備隊と海洋水産部が3月25日から31日にかけて、済州島周辺で船舶30隻と航空機3機による合同パトロールを行ったと報じた。

韓国沿岸警備隊によれば、韓国の排他的経済水域では1日平均300隻の中国漁船が違法漁業を行っている。取り締まりが強化される期間はこれが推定140隻に減るという。

今回拿捕された中国漁船のうち1隻は、1枚あたり4万4000ドル超する大型漁網31枚を設置していた。沿岸警備隊はこのうち20枚を破壊し、残りを押収する予定だ。

北朝鮮と韓国の事実上の海上境界線付近にも、中国の船舶1隻が侵入しているのが発見された。この船の乗組員は漁獲物を過少申告し、また目が細かい網で稚魚まで捕獲することができるタイプの、韓国では禁止されている漁網を使用していた。

乱獲には厳しい措置

韓国沿岸警備隊は今回拿捕した中国漁船に対して、総額33万3000ドルの罰金を科し、うち1隻の船長を逮捕。また報道によれば、5人の乗組員が中国に送還された。

沿岸警備隊のある隊員は中央日報に対して、「稚魚をかき集めて水産資源を乱獲する者に対しては、厳しい措置を取っていく」と述べた。この隊員はまた、韓国政府は違法漁業者の出身国に対して外交協議の際にその事実を提示し、防止策を取るよう強く求めているとも説明した。

本誌はこの件について米ワシントンにある中国大使館と韓国海洋データセンターに書面でコメントを求めたが、返答はなかった。

中国の漁船はしばしば国際水域や他国の排他的経済水域内での乱獲や資源搾取に携わり、海洋個体群の維持や規制施行の取り組みの妨げになっている。

20240514issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年5月14日号(5月8日発売)は「岸田のホンネ」特集。金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口……岸田文雄首相が本誌単独取材で語った「転換点の日本」

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアとの戦争、2カ月以内に重大局面 ウクライナ司

ビジネス

中国CPI、3月は0.3%上昇 3カ月連続プラスで

ワールド

イスラエル、米兵器使用で国際法違反の疑い 米政権が

ワールド

北朝鮮の金総書記、ロケット砲試射視察 今年から配備
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 3

    ウクライナの水上攻撃ドローン「マグラV5」がロシア軍の上陸艇を撃破...夜間攻撃の一部始終

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 6

    「未来の女王」ベルギー・エリザベート王女がハーバー…

  • 7

    横から見れば裸...英歌手のメットガラ衣装に「カーテ…

  • 8

    「私は妊娠した」ヤリたいだけの男もたくさんいる「…

  • 9

    礼拝中の牧師を真正面から「銃撃」した男を逮捕...そ…

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 8

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 9

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 10

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 9

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中