最新記事

中国社会

中国の若者に流行する超弾丸節約トラベル「#特殊兵式旅行」 1日3万歩も歩き宿泊は夜行列車と安宿の女子も

2023年5月20日(土)19時23分

ナティクシス・リサーチのアジア太平洋チーフエコノミスト、アリシア・ガルシア・エレロ氏は「中国人全体では以前ほどお金を使う態勢になっていない。政府が過剰な貯蓄を減らして消費を促そうと努力しても、うまくいくかどうかは疑わしい。人々がまた大金を支出し始めるには雇用の確保と賃金上昇が不可欠になる」と指摘した。

中国の政策担当者が経済成長においてより大きな役割を果たしてほしいと考えている個人消費は、確かにゼロコロナ政策解除後持ち直してきたが、回復ペースはずっと期待を下回り続けている。

なお苦戦が続く不動産市場や、若者世代の記録的高失業率、安定的な仕事に対するより幅広い層の不安、賃金や年金・医療制度に関する政府の「出し惜しみ」などが、慎重な消費行動が変わらない要因になっている、というのが専門家の見方だ。

16日に発表された4月の小売売上高は、前年同月比で18.4%増加した。とはいえ前年同月は上海でロックダウン(都市封鎖)が実施されていた期間で、増加幅は予想の21%に達しなかった。消費者信頼感も昨年の過去最低水準から改善したものの、過去20年のレンジを下回り続けている。

中国版インスタグラムと称されるSNSアプリ「小紅書」に投稿しているある旅行ブロガーはロイターに、安徽省の黄山を訪れた節約旅行では公衆トイレで寝泊まりしたと明かし、「その価値はあった。多少苦労はしたが、最低限のお金で美しい景色を堪能した。(ただし)将来的にはもう少し予算を追加して宿泊環境の改善を検討するかもしれない」と語った。

もちろん中国の消費加速期待が完全になくなったわけではないだろう。

北京に住むシン・チコンさん(23)は、歴史的なシルクロードの都市として知られる西安市にごくわずかのお金で行こうとしたところ、あまりにも大変だったので、結局当初予算よりも出費は多くなった。

「正しい靴を履いていなかったのかもしれない。でも私の足は1万歩を超えた時点で痛み始めた」と話した上で、冗談で自身の体験を「戦闘による負傷付き特殊兵式旅行」にたとえてみせた。

(Casey Hall記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2023トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国の長期国債、投資家はリスクに留意すべき=人民銀

ビジネス

中国4月鉱工業生産、予想以上に加速 小売売上高は減

ワールド

シンガポール非石油輸出、4月は前年比-9.3% 米

ビジネス

アングル:ウォルマートの強気業績見通し、米消費の底
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇跡とは程遠い偉業

  • 4

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 5

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 6

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 7

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 8

    半分しか当たらない北朝鮮ミサイル、ロシアに供与と…

  • 9

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 10

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中