最新記事

米中対立

フィリピン、米軍が利用可能な基地4カ所発表 中国対処シフトを鮮明に

2023年4月4日(火)18時54分
大塚智彦
ハイマースの実弾射撃訓練

フィリピン軍と米軍の合同演習でのハイマースの実弾射撃訓練 Eloisa Lopez - REUTERS

<台湾や南シナ海での有事に米軍の即応展開が可能に>

フィリピン政府は4月3日、米国との「米比防衛協力強化協定(EDCA)」に基づくフィリピン国内で米軍が新たに使用可能な基地など4カ所について詳細を明らかにした。

これは2月に米オースティン国防長官がフィリピンを訪問してカリート・ガルベス比国防相と会談した際に、これまで米軍が使用可能としてきた5カ所に加えて新たに4カ所増やし合計9カ所とすることで合意していたものの、詳細な場所などについてはこれまで明らかにされてこなかった。

新たに米軍がフィリピンでの演習などで展開する場合に使用が可能となるのは、北部ルソン島北東部のカガヤン州カミロ・オシアス海軍基地、民間のラルロ空港、カガヤン州の南に位置するイサベラ州にあるメルチョール・デラクルス陸軍駐屯地、そして南シナ海の南沙諸島に近い南西部パラワン州のバラバック島の4カ所となっている。

バラバック島はバラバック海峡を挟んでマレーシア・ボルネオ島から約50キロの位置にある。マレーシアも南シナ海での領有権問題を抱えており中国との間で権益争いを抱えているという同じ事情を抱えている。

2016年に比米間で合意に達した既存の5カ所は、中部ビサヤ地方のセブ州、南部ミンダナオ島北部にあるミサミス・オリエンタル州のカガヤン・デ・オロ、パラワン州、米軍のスービック海軍基地やクラーク空軍基地のあったルソン島中部のパンパンガ州、同じくルソン島中部のヌエべ・エシハ州の5カ所。そこに今回4カ所が新たに追加されたことになる。

台湾、南シナ海での有事に即応

今回追加された米軍が使用可能な基地などはそのうち3カ所が北部ルソン島の北東部に位置する。そしてルソン島の北方には台湾海峡を経て台湾がある。

このため追加されたルソン島の3基地は台湾有事を視野に入れたものとみられており、米政府が台湾有事にここから米軍を展開することが予想されている。

また南部パラワン州最南端部沖合の離島バラバック島は中国が一方的に海洋権益を主張してフィリピンと領有権争いを繰り返している南シナ海に面している。特に南沙諸島に近い位置にあることから南シナ海問題への米国のコミットメントを明確に示すシグナルを中国に送るものとなった。

【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

習中国主席、フランス・セルビア・ハンガリー訪問 5

ビジネス

米エリオット、住友商事に数百億円規模の出資=BBG

ワールド

米上院議員、イスラエルの国際法順守「疑問」

ワールド

フィリピン、南シナ海巡る合意否定 「中国のプロパガ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中