最新記事
陰謀論

TVリポーターに突然の異変──目はうつろ、ふらつく ネット上に溢れる「ワクチンのせいだ」の声

Presenter Suffers Medical Emergency Live on Air, Sparks Conspiracy Theories

2023年1月11日(水)18時50分
アレックス・フィリップス
TVリポーター

(写真はイメージです) Tunatura-iStock

<生中継中、突如異変に襲われたTVリポーター。ネット上には「ワクチンのせいだ」とする陰謀論が相次いで投稿されている>

カナダ・エドモントンを拠点に活動するTVリポーターが1月8日、テレビの生中継中に体調不良に陥ったことで、新たな陰謀論がネット上を渦巻いている。

そのTVリポーターはCTV News Edmontonに所属するジェシカ・ロブ。彼女は現場からの生中継の最中に口ごもり、ふらつく。その後、同局は「彼女は回復し休んでいる」とTwitterへの投稿で明らかにしている。

だが放送後、ロブに何が起きたのか、そして何が原因だったのかを巡って、ネット上には根も葉もない陰謀論が溢れた。

映像を見ると、ロブはスタジオのナーレマン・イッサの質問に対して、呼吸が苦しそうに応じている。深く息を吸い込むも言葉が出てこなくなり、同じフレーズを何度か繰り返した後に、以下のように話す。

「ごめんなさい、あまり気分が良くなくて、このままだと...」

映像がスタジオに戻る直前、ロブは目がうつろになり、つまずく。イッサは「ロブは一人ではありません。撮影クルーと一緒にいます」と説明した。

【動画】生中継中、突如口ごもるTVリポーター

ロブのTwitterアカウントは現在、非公開に設定されている。だが、撮影クルーのショーン・マクルーンに宛てた感謝の言葉や、イッサを「圧倒的なプロ」と評したツイートのスクリーンショットが、Twitter上で見られる。

だが、CTV News Edmontonやロブ自身による公式な発表を待たずして、新型コロナウイルス関連の陰謀論を唱える複数のTwitterユーザーが、ロブの突然の体調不良は「ワクチンによる副作用」が原因だったと断定。あるユーザーが、彼女がワクチンを3回接種していることを過去のツイートから把握したためだ。

反ワクチン派のプロパガンダ映画『Died Suddenly』の公式Twitterアカウントは「気がかりだ」と言い、ロブの体調不良を「3回のワクチン接種」と関連付けた。

陰謀論映画『Plandemic』に関する記事を複数投稿し、バイデン政権の首席医療顧問を務めてきたアンソニー・ファウチ博士を「反キリスト」呼ばわりしたキリスト教系ウェブサイト、Now The End Beginsは、以下のようにツイートした。

「極めて不快だ。我々の目の前で崩壊が起きている。どうか彼女が助かるように祈ってほしい」

Twitter上には他にも、ロブは脳卒中や心臓発作に襲われたのだとする推測も飛び交った。だがどちらの病気も、ワクチン接種者よりもコロナ感染者に発生するケースの方がはるかに多いというのが、医学専門家たちの見解だ。

1月2日、フットボール選手のダマール・ハマリンが試合中に心不全を発症した時も、反ワクチン派は今回と同様の反応を示していた。

保守派の活動家であるチャーリー・カークは「スポーツ選手が突然、倒れる。あまりにも身近で悲惨な光景です」とツイート。スポーツ選手たちの死とワクチンを関連付ける陰謀論を、明確に意識した上でのコメントだろう。

また、Fox Newsでのタッカー・カールソンとの対談で、ワクチン関連の有害事象の多さに疑問を呈している医学博士のピーター・マッカローは「最も心配すべきはワクチンが原因の心筋炎だと思う」と述べていた。

このような「陰謀説の嵐」を受け、ファウチ博士はCBSにこう語っていた。

「またしても陰謀論。ナンセンスです。人々に、ワクチン接種をしない、家族にもさせないという決断をさせ、その結果、命を落とすかもしれないのに」

202404300507issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月30日/5月7日号(4月23日発売)は「世界が愛した日本アニメ30」特集。ジブリのほか、『鬼滅の刃』『AKIRA』『ドラゴンボール』『千年女優』『君の名は。』……[PLUS]北米を席巻する日本マンガ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ナワリヌイ氏殺害、プーチン氏は命じず 米当局分析=

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中