最新記事

反政府デモ

イラン反政府デモでプロサッカー選手に死刑判決 

Iranian Soccer Player Faces Death Penalty After Protest Accusation

2022年12月14日(水)18時18分
トーマス・キカ

W杯カタール大会で反政府デモを行うイラン人観客(11月29日、イラン対アメリカ戦) Kai Pfaffenbach-REUTERS

<反政府デモに参加した後11月に逮捕され、早くも死刑判決。9月に始まった「ヒジャブデモ」では300人が治安当局に殺されたとされ、2人目の公開処刑も行われた。若者をターゲットにしたこの殺戮はいつまで続くのか>

イランのプロサッカー選手が、女性の権利に関する全国的な抗議活動で行ったとされる行為により、死刑の危機に直面している。

アブダビの英字新聞「ナショナル・ニュース」によれば、26歳のアミール・ナスル=アザダニは11月、抗議活動に参加した後に逮捕され、イスラム革命防衛隊の司令官の死に関連して起訴された。

その後イランの国営テレビが、ナスル=アザダニが他の2人とともに司令官の死について自白しているかのような映像を放映した。

ナスル=アザダニは、「神への敵意」を意味するモハレベという罪で起訴された。モハレベは死刑に相当する罪で、抗議活動に参加したほかの2人はすでに、この罪で処刑されたとナショナル・ニュースは報じている。

オランダに本拠を置く国際プロサッカー選手会(FIFPRO)は12月13日、ナスル=アザダニの扱いを批判した。FIFPROは、ナスル=アザダニと連帯する立場にあることを明言し、直ちに起訴を取り下げるよう求めた。

【動画】「ヒジャブデモ」で公開絞首刑になった(なる)若者たち

FIFPROは、「イランで女性の権利と自由のために運動したプロサッカー選手のアミール・ナスル=アザダニが、処刑の危機に直面しているという報道に衝撃を受け、嫌悪感に襲われている」とツイート。「私たちはアミールと連帯し、彼の刑罰を直ちに取り下げるよう求める」

イランで全国的な抗議活動が発生したきっかけは、9月に22歳のマフサ・アミニが「風紀警察」に拘束され、死亡したとされる出来事だ。アミニは首都テヘランを訪れたとき、ヒジャブを正しく着用していたために逮捕されたと伝えられている。

これまでに300人以上の抗議者が、デモの鎮圧を試みる治安部隊に命を奪われたと伝えられている。11月の書簡では、イラン議会の過半数が、抗議者に対して厳しい罰を与えるよう要求し、「扇動者に死を」と訴える者もいた。

ナスル=アザダニは、2015〜2018年の3シーズンを、イラン国内におけるサッカーのトップリーグ「ペルシアン・ガルフ・プロリーグ」でプレイし、2シーズン目と3シーズン目は「トラークトゥール・サーズィー」にディフェンダーとして所属した。それ以前は、2012〜2015年に、セパハンFCのユースリーでプレイしていた。

(翻訳:ガリレオ) 

20240521issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年5月21日号(5月14日発売)は「インドのヒント」特集。[モディ首相独占取材]矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディの言葉にあり

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 8

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中