最新記事

サウジアラビア

「砂漠で、ウインタースポーツ?」サウジアラビアの未来都市「ネオム」でアジア冬季大会開催へ

2022年10月16日(日)10時02分
青葉やまと

サウジとウインタースポーツの組み合わせは意外だが、高地で開発中のトロヘナ地区は大会会場としてうってつけだったようだ。標高2000メートル級の同地は、年間を通じて摂氏10度以下という涼しい気候になっている。冬季は氷点下に達する。

ネオム・プロジェクトは、「一年中アウトドアでのスキーやアドベンチャースポーツを楽しめるリゾート」であり、「サウジアラビアの世界的なランドマークとなるでしょう」と強調している。スキーやスノーボードのほか、季節に応じてマウンテンバイク、パラグライダー、ヨガ、音楽フェスにカンファレンスなど、各種アクティビティとイベントを楽しめるという。

英デザインサイトの「デジーン」によると、ネオム・プロジェクトのナディ・アル=ナスルCEOは、「トロヘナは砂漠の中心部にありながら、冬の雰囲気を創造し、この冬季大会を前代未聞の世界的なイベントとするにふさわしいインフラを備えることとなります」と述べ、開催への自信を示している。

ただし、冬季に一部降雪はあるものの、年間を通じたウインタースポーツに十分な積雪には至らない。欧州ニュース専門局のユーロ・ニュースは、リゾートで使用される雪は「ほとんどすべて」が人工雪になると報じている。ネオムで使用される電力は100%再生可能エネルギーで賄われる計画だが、それでも環境への負荷は無視できないとの指摘もあるようだ。

>>■■【動画・画像】アジア冬季大会、砂漠で開催へ 74兆円かけ開発中の未来都市「ネオム」で■■

壮大な都市構想「ザ・ライン」でも話題に

トロヘナは、未来都市・ネオムを構成する10地区のひとつにすぎない。ネオム・プロジェクトは今年、長さ170キロに及ぶ壁状の構造物「ザ・ライン」の建設計画を発表し話題となった。分散していた建物を垂直に統合し、直線上に並べることで一体化した環境を創造する計画だ。


ネオムはザ・ラインについて、「都市生活の未来の姿」だとしている。内部に住環境やオフィススペースなどのほか、植栽をふんだんに設ける。あらゆる施設を密に集合させることで、歩いて5分以内ですべてが揃う至便な生活環境を実現するという。バルセロナやブラジリアで試行されたように、住居から車不要で商業施設へアクセスできる地区設計「スーパーブロック」の考え方を取り入れている。

あまりに巨大なプロジェクトであるため実現を疑う声もあるが、プロジェクトのアリ・シハビ顧問は英BBCに対し、需要に応じてモジュール単位で順次建設・拡張する方針だと説明している。

オイルマネーへの依存を解消すべく、近年サウジアラビアは先進的な都市の開発に力を入れている。ネオムでの大会は、スポーツイベントとしての盛り上がりはもちろんのこと、デザインや建築の面でも注目を集めることになりそうだ。

>>■■【動画・画像】アジア冬季大会、砂漠で開催へ 74兆円かけ開発中の未来都市「ネオム」で■■

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国人民銀、住宅ローン金利と頭金比率の引き下げを発

ワールド

米の低炭素エネルギー投資1兆ドル減、トランプ氏勝利

ワールド

パレスチナ自治政府のアッバス議長、アラブ諸国に支援

ワールド

中国、地方政府に「妥当な」価格での住宅購入を認める
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇跡とは程遠い偉業

  • 4

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 5

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 6

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 7

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 8

    半分しか当たらない北朝鮮ミサイル、ロシアに供与と…

  • 9

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 10

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中