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トンガの火山噴火は理論上の最大速度の大気波、地球を6周回していた

2022年7月5日(火)19時10分
松岡由希子

トンガのフンガ・ハアパイ火山噴火は特異な火山事象だった(NESDIS).

<1月15日にトンガで発生した海底火山の大規模噴火は、その規模、速度、重力波や大気波が発生する範囲において、近現代で最も猛烈な火山事象のひとつであったことが明らかに>

トンガの首都ヌクアロファの北北西65キロに位置する海底火山「フンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ」で2022年1月15日に発生した大規模噴火は、近現代で最も猛烈な火山事象のひとつであったことが明らかとなった。

「フンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ」は2021年12月20日に噴火。しばらく活発な活動が続いた後、この大規模噴火が発生し、地表から50キロ以上にわたって垂直に噴煙を上げた。

理論上の最大速度の大気波、地球を6周回

英バース大学らの研究チームは、衛星データと地上での観測データを組み合わせてこの大規模噴火について分析。その規模、速度、重力波や大気波が発生する範囲において、この大規模噴火が特異であったことを示した。この研究論文は2022年6月30日、学術雑誌「ネイチャー」で発表されている。

この大規模噴火で大気中に引き起こされた波は、少なくとも6回、地球を周回し、その速度は、理論上の最大速度に近く、観測史上最速の秒速320メートルに達した。

また、噴煙中の水や火山灰から放出される熱は、12時間にわたって地球上の重力波の発生源となった。衛星観測では、太平洋岸で波紋状の波面が広がっていたことが確認されている。

「データは地球大気の解明や気象・気候モデルの改良に役立つ」

一つの火山事象がこれほどの広範囲に影響を及ぼすのは、これまでの観測記録で他に類を見ない。研究論文の筆頭著者でバース大学のコーウィン・ライト博士は「この大規模噴火は実に巨大な爆発で、今までに科学的に観測された中で唯一のものだ。大気波が理論上の上限に近い速度で地球を周回するのをこれまで見たことがない」とし、「この大規模噴火は驚くべき自然実験だ。ここで得られたデータは地球大気の解明や気象・気候モデルの改良に役立つだろう」と述べている。

【動画】>>■■トンガ海底火山噴火の威力■■

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