最新記事

世界経済

インフレ加速で高まる社会不安 憂慮すべき5カ国まとめ

2022年7月30日(土)11時42分

2.パキスタン

6月に21.3%にまで上昇したインフレにより、パキスタンは深刻な経済危機に直面している。同国では過去10年以上見られなかった高いインフレ率だ。

政府は財政赤字の膨脹を抑え込み、国際通貨基金(IMF)による救済計画を再開するために負担の大きい補助金を廃止したが、それを背景に、5月以降、燃料価格は約90%も上昇した。

6月には、野党が組織した全国規模のインフレ反対の抗議行動が行われた。

イムラン・カーン前首相が4月に失職した後、政治情勢は不安定なままである。カーン氏失職の背景には、インフレと政治腐敗に対する失望の広がり、また有力な軍部の信任を失ったとの観測があった。

スリランカと同様、パキスタンは燃料や食用油など必需品の多くを輸入に依存しているが、供給確保のための外貨準備高は十分とは言えない。

6月末時点でパキスタンの中央銀行が保有する外貨は、必要物資の輸入に換算して約6週間分相当にすぎなかった。

3.アルゼンチン

アルゼンチンでは今月、多数のデモ隊が大統領府の門を目指して行進し、インフレと膨大な国家債務を巡ってアルベルト・フェルナンデス大統領に対する抗議の声を挙げた。

アルゼンチンでは数十年にわたって繰り返し経済危機が発生してきたが、現在は、60%を超えるインフレ率、また天然ガス輸入コストの上昇に苦慮している。

アルゼンチンは今年に入りIMFと450億ドルの債務再編計画で合意したが、国民の多くはこの合意が貧困の増加につながると考えており、撤回を求めて街頭へと繰り出している。

そればかりか、ベリスク傘下でリスク分析を担当するベリスク・メープルクロフトによれば、連立与党内でも権力闘争があり、2023年の選挙に向けて激化が予想されるという。

リスクコンサルタント企業クライシス24によれば、経済不安とIMFとの合意への怒りから、来年にかけて抗議行動が発生する可能性が高いという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

大和証券Gとかんぽ生命、資産運用分野で資本業務提携

ワールド

インド卸売物価、4月は前年比+1.26% 1年ぶり

ビジネス

米ウーバー、独デリバリー・ヒーローの台湾事業買収 

ワールド

インフレ抑制に「全力尽くす」、引き締め維持=トルコ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 4

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プー…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 8

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 9

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 10

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中