最新記事

ヘルス

確実に「避妊」でき、準備不要で、再建手術も可能──今こそパイプカットを!

Consider a Vasectomy

2022年6月9日(木)19時22分
エリン・セーゲン(ジャーナリスト)
ベッドの男女

子供を望まない人が増えているが、避妊の男女格差は縮まらない VADIMGUZHVA/ISTOCK

<アメリカで人工妊娠中絶の権利が脅かされるなか、男性ができる避妊法「パイプカット」には、これだけの利点がある>

想像してほしい。ホルモンを使わず、ほぼ100%効果的で、セックスの前に準備にあたふたする必要がなく、忘れることはあり得ない避妊法を――。ただし、条件が1つ。睾丸がなければ駄目だ。

その避妊法とは、もちろんパイプカット(精管切除)のこと。アメリカでは、人工妊娠中絶の権利を認めた「ロー対ウェード」判決が覆されようとしている。妊娠を招く可能性がある人は、誰もがパイプカットを検討すべきときだ。

「間違いなく、もっと多くの男性がこの手術を受けられるはずだ」と、男性の性と生殖のヘルスケアを専門とするワシントン大学のマーラ・ヘヘマン助教(泌尿器学)は言う。

精子の通路である精管の切断手術はとても簡単だ。ヘヘマンはあるパーティーで、友人の夫たちに「自宅の居間でもできると話したら、すごく驚かれた」と言う。患者は手術の際に局所麻酔を受け、術後の回復期にはき心地のいい下着を身に着けるだけでいい。

それなのに避妊法ランキングで、パイプカットは最下位クラスだ。妊娠を防ぐため、大半の人が頼っているのは女性。より正確に言えば、精子でなく卵子を生み出す側だ。

米疾病対策センター(CDC)の調査によれば、15~49歳のアメリカ人女性のうち、最も一般的な避妊法は卵管結紮術(18.1%)。経口避妊薬が14%で、子宮内避妊器具(IUD)・避妊インプラントは10.4%だ。コンドームは8.4%、パイプカットはわずか5.6%だった。

1日の検索数が99%増

男性がパイプカットに踏み切るのは通常、父親になった後だ。子供のいない若年層ではそれほど一般的でないが、選択肢としてもっと検討すべきではないか。精管を切断しても、再建手術で元に戻せる(とはいえ、妊娠の確率に影響が出る可能性はある)。

さらに、若年男性層では子供を望まない傾向が強くなっている。つまり、パイプカットがより役立つ世代だ。

ピュー・リサーチセンターが昨年発表した調査では、18~49歳の子供がいない人のうち、子供を持つ可能性が「ほぼない」か「全くない」と回答した人の割合は44%。1990~2013年まで、子供を欲しくない人の割合は4~5%にすぎなかったことを考えると、明らかに大きな文化的変革が起きている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

再送-バイデン政権の対中関税引き上げ不十分、拡大す

ワールド

ジョージア議会、「スパイ法案」採択 大統領拒否権も

ビジネス

米ホーム・デポ、売上高が予想以上に減少 高額商品が

ワールド

バイデン大統領、対中関税を大幅引き上げ EVや半導
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プーチンの危険なハルキウ攻勢

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 10

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中