最新記事

広告写真

米マクドナルド、ハンバーガー写真を「盛りすぎ」で訴えられる 

2022年5月23日(月)17時30分
青葉やまと

誇張された写真、誰もが気になっていた

訴訟はアメリカで話題を呼んでいる。誰もが誇張されたバーガー広告を受け入れつつも、心のどこかに引っかかっていたようだ。

米ヤフー・ファイナンスの番組では、法律担当のアレックス・キーナン記者が、興味深い話題としてこの件をスタジオに持ち込んだ。記者は朗らかに笑いながらも、「人々はみな、店舗で目にするのと同じやり方で広告してほしいと望んでいるのです」と指摘する。

キーナン記者によると原告は、両チェーンが「ほとんどすべてのメニュー商品」に関して「虚偽の広告」を流していると主張している。具材となるビーフ・パティのサイズについては、広告よりも15%から25%小さいとの主張だ。

スタジオでは広告と実物の比較映像が示され、ジューシーで照りのあるようにみえる広告と、乾燥していて高さがなく、ビーフパティも広告より小さな現物が比較された。

改めて違いを目にした番組司会者の男性は笑いながら「非常にドラマチック」な差があると応じ、「みんな不思議に思っていたのでは」「私は最低でもここ30年間、バーガーがCMのようにはみえないと文句をいってきた」とユーモアたっぷりに同調した。

勝訴の可能性は

今回の訴訟はフードスタイリングによる誇張が常態化したフード業界にメスを入れるものだが、原告側法律事務所の勝算は薄いとの指摘もある。

ニューヨーク・バッファロー大学のマーク・バーソロミュー教授(知財・法学)は英BBCに対し、裁判官の支持を得るためには2つの証拠が必要だと指摘する。

すなわち、顧客が広告によって騙されたという証拠と、広告が購入の意思決定の決め手になったという証拠だ。バーソロミュー教授は、「原告にとってこれらの証明は両方とも、困難な戦いとなるでしょう」と語る。

教授によると被告2社は、一般的に人々はマーケティングに対して多少の誇張を見込んでいると主張し、広告によって騙された事実を否定する可能性があるという。原告としても本格的な裁判を想定しておらず、ある程度の条件での和解を見込んでいるのではないかと教授はみる。

今回訴訟に踏み切った3つの法律事務所は、以前からバーガー業界に厳しい目を向けていた。3月には別の原告の代理人として米バーガーキングを相手取り、同社の主力バーガー「ワッパー」が広告よりも35%小さいと訴えている。

大胆な判決は期待できないようだが、もしも広告と実物のかい離がアンフェアだと相次いで認められれば、日本のバーガーチェーンの広告のあり方も変わってゆくのかもしれない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

イーサ現物ETF上場承認に期待、SECが取引所に申

ワールド

ロシア軍が戦術核使用想定の演習開始、西側諸国をけん

ビジネス

アングル:米証券決済、「T+1」移行でMSCI入れ

ビジネス

米国株式市場=小幅高、エヌビディア決算前に様子見も
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    9年前と今で何も変わらない...ゼンデイヤの「卒アル写真」が拡散、高校生ばなれした「美しさ」だと話題に

  • 4

    「目を閉じれば雨の音...」テントにたかる「害虫」の…

  • 5

    服着てる? ブルックス・ネイダーの「ほぼ丸見え」ネ…

  • 6

    ベトナム「植民地解放」70年を鮮やかな民族衣装で祝…

  • 7

    高速鉄道熱に沸くアメリカ、先行する中国を追う──新…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    「韓国は詐欺大国」の事情とは

  • 10

    中国・ロシアのスパイとして法廷に立つ「愛国者」──…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 8

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 9

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 10

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中