最新記事

ゼロコロナ

長期ロックダウンに怒る上海市民 検閲回避しSNSに抗議の声あふれる

2022年4月28日(木)10時52分

「全員がアパートに閉じ込められているので、何が起こっているのかを把握するのは非常に難しい。私はウィーチャットで仲間内の投稿を見て自分の経験を裏付けた上で、起きていることを証言している」とリムさんは語った。

民衆の歌

長年にわたってオンラインの言論と表現が検閲されてきた中国だが、上海の住民は今、映画「レ・ミゼラブル」の「民衆の歌」の動画をアップしている。2019年の香港民主化デモの期間に検閲を受けていた抗議の歌だ。

先週は、上海の住民が隔離環境を批判して助けを求めている音声クリップをまとめた「四月の声」という6分間の動画が拡散され始め、削除された。

しかし、その後もさまざまな形で繰り返し再投稿され、ついにブロックチェーン上のデジタル資産である「非代替性トークン(NFT)」になった。これでもう削除はできない。

不潔な隔離施設の動画や、隔離施設に改造するためにアパートからの立ち退きを言い渡されて抗議する人々の動画もアップされた。

ライデン大学(オランダ)の近代中国研究助教授、ロジエ・クリーマーズ氏によると、これらはすべて削除された。

クリーマーズ氏は「異議を唱える人々はいるが、それがすなわち、その人々が革命論者であることを意味するわけではない。人々は食料を求め、新型コロナ対策にしびれを切らしているのだ。中国共産党の転覆を求めているのではない」と言う。

同氏は 「プラットフォームは以前から厳しく規制されており、コンテンツ規制はさらに厳格化してきている」と付け加えた。

中国当局はこの1年間、巨大インターネット企業への締め付けを強めてきた。

スマホの無い高齢者

リムさんの近所では、共同購入に加われない人々がロックダウンで困難に直面している。

「スマートフォンの無いお年寄りは、家族や近所の人々に助けを求めざるを得ない。近隣委員会の会長が一軒一軒回り、そうした人々の一部に手を貸している」とリムさんは説明した。

1人暮らしのダニエルさんにとって、ロックダウンは精神衛生上厳しいが、近所の人々と近づく機会にもなった。

「上海のような大都市に住んでいると、お隣さんとさえ一度も会わないことがある」が、「このロックダウンで突如として全員が同じウィーチャットのグループに入り、お互いに対話し、良いニュースから悪いニュース、怒りまで、何でも話題を共有するようになった」という。

(Rina Chandran記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・コロナ感染で男性器の「サイズが縮小」との報告が相次ぐ、「一生このまま」と医師
・新型コロナが重症化してしまう人に不足していた「ビタミン」の正体
・日本のコロナ療養が羨ましい!無料で大量の食料支援に感動の声
・コーギー犬をバールで殺害 中国当局がコロナ対策で...批判噴出


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米4月雇用17.5万人増、予想下回る 賃金伸び鈍化

ワールド

欧州委、中国EV3社に情報提供不十分と警告 反補助

ビジネス

米4月雇用17.5万人増、予想以上に鈍化 失業率3

ビジネス

米雇用なお堅調、景気過熱していないとの確信増す可能
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 7

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中