最新記事

北朝鮮

北朝鮮の超高級マンション「ペントハウス」、エレベーター動かず水道出ず

2022年4月19日(火)09時38分
金正恩朝鮮労働党総書記が出席して開かれた平壌の集合住宅完成式典

マンションの最上階に造られる特別仕様の高級住戸「ペントハウス」は、多くの国では人々にとって手の届かぬ憧れの的だ。しかし北朝鮮ではそうでもない。写真は金正恩朝鮮労働党総書記が出席して開かれた平壌の集合住宅完成式典。KCNAが13日に配信(2022年 ロイター)

マンションの最上階に造られる特別仕様の高級住戸「ペントハウス」は、多くの国では人々にとって手の届かぬ憧れの的だ。しかし北朝鮮ではそうでもない。

金正恩朝鮮労働党総書記は首都平壌に、外見は豪華な高層マンションを続々と建設しており、最近80階建ての物件が完成した。

脱北者など北朝鮮の人々によると、こうしたマンションはエレベーターが満足に動かず、電気や水道に不備があり、職人の技量にも懸念があるため、最上階近くに住みたいと思う人は少ないという。

2017年に韓国に亡命したジュン・シウさんは「北朝鮮では富裕層ではなくて貧困層がペントハウスに住んでいる。エレベーターが正常に稼働しないことが多く、水圧が低くて給水できないからだ」と話す。

自分はエレベーターのない13階建ての物件の3階に住んでいたが、40階建ての28階に住んでいた友人はエレベーターが動かず、使ったことがなかったという。

今週竣工した80階建て高層マンションについても、金氏が自慢しているだけだと考えている。「住民のことを思ったというより、北朝鮮の建設技術がどれだけ上がったかを示すのが目的だ」と冷ややかだ。

社会主義国家の北朝鮮は住居が割り当て制で、住宅やマンションの売買は厳密には違法。

しかし専門家によると、実際には物件の売買が普通に行われており、主に金正恩体制下で拡大した民間市場で利益を得た人たちが手を出している。金氏は、建築の質を高め、何万戸ものマンションを新築する方針を打ち出している。

北朝鮮経済は、新型コロナウイルス感染防止のための国境閉鎖や自然災害、核・ミサイル開発への制裁措置で打撃を受けており、米国によると、入手できる資源は限られ、国民の需要を満たすには程遠い状態にある。

一方、北朝鮮の国営メディアは13日、平壌で計画されている5万戸のマンションのうち、80階の高層マンションを含む最初の1万戸が完成したと報じた。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

大手3銀の今期純利益3.3兆円、最高益更新へ 資金

ワールド

ニューカレドニアの暴動で3人死亡、仏議会の選挙制度

ワールド

今年のユーロ圏成長率、欧州委は2月の予想維持 物価

ワールド

ウクライナ大統領、外遊取りやめ 東部戦況悪化が影響
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 4

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プー…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 8

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 9

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 10

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中