最新記事

サイバー戦争

ロシアによる侵攻直前、ウクライナが破壊的サイバー攻撃を受けていた──マイクロソフトが検知・支援

2022年3月4日(金)19時11分
松岡由希子

侵攻直前、攻撃的かつ破壊的なサイバー攻撃が発生していた...... REUTERS/Umit Bektas/File Photo

<ウクライナ侵攻の数時間前にウクライナのデジタルインフラに破壊的なサイバー攻撃が発生していた>

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の数時間前に、ウクライナのデジタルインフラに対する攻撃的かつ破壊的なサイバー攻撃が発生していたことが明らかとなった。マイクロソフトが2022年2月28日、公式ブログで発表した。

マイクロソフトがウクライナ政府に直ちに報告

マイクロソフトは「サイバー攻撃から政府や国家を防御するのを助けることは、企業としての主たるグローバルな責任のひとつ」とし、ウクライナ政府をはじめ、欧州連合(EU)、欧州諸国、米国政府、北大西洋条約機構(NATO)、国際連合(UN)と常に緊密に連携している。

マイクロソフト脅威インテリジェンスセンター(MSTIC)によると、2月23日、ウクライナに所在、もしくはウクライナと関連する複数の政府機関、情報機関、金融機関、エネルギー機関にわたり、数百ものシステムに影響を及ぼす破壊的なマルウェア攻撃が見つかった。

マイクロソフトはウクライナ政府に対し、「フォックスブレード(FoxBlade)」と名付けられたこの新たなマルウェアを含めて現状を直ちに報告し、マルウェアの目標達成を阻止するための技術的な助言を行った。また、検知から3時間以内に、このマルウェアを検知するシグネチャが作成され、マイクロソフトのセキュリティ対策サービス「ディフェンダー」に追加されている。

民間組織を標的としたサイバー攻撃については特に懸念が残る

ウクライナでは、2017年6月にも「ノットペトヤ(NotPetya)」と呼ばれるランサムウェアが初めて検出され、国内の送電網や空港、政府機関、金融機関など、1万2500台以上のマシンに影響を及ぼした。

「フォックスブレード」による攻撃はこれほど広範囲には及んでいないものの、マイクロソフトは「金融、農業、人道支援、エネルギーなど、民間組織を標的とした最近のサイバー攻撃については特に懸念が残る」との見解を示す。

マイクロソフトではウクライナ政府と情報を共有し、健康データや保険データ、交通に関連する個人情報(PII)、その他の政府データを含め、様々な情報を窃盗しようとするサイバー活動についても助言している。

ロシア国営メディア「RT」「スプートニク」の域内放送禁止

欧州連合は、3月2日、ロシア国営メディアの「RT」と「スプートニク」の域内での放送活動を禁止すると正式に発表した。

マイクロソフトでは、この方針を受けて、ニュース配信サービス「マイクロソフトスタート」で「RT」と「スプートニク」のコンテンツを非表示にしたほか、アプリストア「マイクロソフトストア」から「RT」のアプリを削除した。また、マイクロソフトのアドネットワークでは「RT」と「スプートニク」の広告を全面的に禁止している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年2月以来の低水準

ビジネス

アングル:「豪華装備」競う中国EVメーカー、西側と

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 4

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 5

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 8

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 9

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 8

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中