最新記事

北京五輪

ワリエワ、フィギュア個人戦「出場」でもメダルは剥奪?

Will Kamila Valieva Eventually Be Stripped of Any Beijing Olympic Medals?

2022年2月15日(火)16時42分
ゾーエ・ストロズースキ

米デューク大学の法学教授で、同大学のスポーツ法学&政策学センターの共同ディレクターを務めるポール・ハーゲン博士は、本誌に対して、IOCがメダル授与式を行わないのは、ワリエワのメダルはく奪の可能性を残すことが狙いだと「確信している」と語った。

「IOCは、今回の問題を深刻に受け止めているというメッセージを発信しようとしているのだろう。ワリエワにメダルを授与した後でも、メダルをはく奪することは可能だが、現在の状況について、比較的高い水準の懸念を表明しているのだと思う」とハーゲンは述べた。

カナダのマニトバ大学のサラ・ティーツェル博士も、メダル授与式を行わないというIOCの決定は、ドーピングについてのメッセージを発信することが狙いだというコラーとハーゲンの考えに同調。だが一方で、この決定がワリエワのメダルはく奪の前触れかどうかについては憶測を控えた。

「IOCがメダル授与式を行わないのは、ドーピング違反に対して何も対処しないと思われないようにするためだろう。彼らとしては、この問題に目をつぶる訳にはいかない」とティーツェルは本誌に語った。

出場継続を認める裁定に反発の声が続々

彼女はまた、15歳というワリエワの年齢が、今回の問題を「きわめてデリケートなもの」にしているとも指摘。もしもワリエワが、保護措置の適用されない16歳以上の選手だったら「今と同じ状況にはなっていなかっただろう」と述べた。

IOCはまた14日の発表の中で、15日に行われる女子シングルのショートプログラムで、ワリエワが24位以内に入った場合、17日のフリープログラムには(本来出場できない)25位の選手も参加させると発表。これもまた、ワリエワの競技結果を(たとえ彼女が上位に入っていなかったとしても)後から無効にする可能性を残すための「準備」とみられる。

ワリエワの出場継続が認められたことに、米国オリンピック・パラリンピック委員会(USOPC)をはじめ、複数の現役・元フィギュアスケート選手からは批判の声が上がっている。

USOPCは14日、「今回の決定が送るメッセージに失望している」との声明を発表。同委員会のサラ・ハーシュランド最高経営責任者(CEO)は、「スポーツの品位を守り、選手やコーチなど全ての者が最高の水準を維持するのは、オリンピック・コミュニティー全体の責務だ」と述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アストラゼネカ、30年までに売上高800億ドル 2

ビジネス

正のインフレ率での賃金・物価上昇、政策余地広がる=

ビジネス

IMF、英国の総選挙前減税に警鐘 成長予想は引き上

ワールド

シンガポール航空機かバンコクに緊急着陸、乱気流で乗
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 4

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    9年前と今で何も変わらない...ゼンデイヤの「卒アル…

  • 7

    ベトナム「植民地解放」70年を鮮やかな民族衣装で祝…

  • 8

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 9

    服着てる? ブルックス・ネイダーの「ほぼ丸見え」ネ…

  • 10

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 5

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 8

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 9

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 10

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中