最新記事

UFO

もはやオカルトの域を越えた 米国防総省がUFO調査局を新設へ

2022年1月17日(月)15時57分
青葉やまと

2019年に本物の映像と米海軍が認めた映像 CNBC Television-YouTube

<いまや未確認飛行現象はオカルトの域を越え、国防上の重要課題となりつつある>

アメリカでUFOの調査が本格化しそうだ。米上院は昨年12月、俗に「UFO調査部隊」とよばれる調査部署の新設を承認した。バイデン大統領が署名を行い次第、180日以内に国防総省下に所轄部署が設置される。上院を通過したこの法案は、「未確認飛行現象の解明を目的とした部局、組織的枠組み、および所管当局」を設立するよう定めている。

今回承認された部署は、正式名を「異常現象監視・解決局」(ASRO: Anomaly Surveillance and Resolution Office)という。未確認飛行現象(UAP: Unidentified Aerial Phenomena)の目撃情報に応じて素早く行動し、現地にチームを派遣して調査を実施するなどにより、最終的には飛行物体の技術詳細と飛来元などの解明を図る。飛行現象を目撃したことで目撃者に健康被害が生じているケースも想定し、そうした場合には医療上のサポートも行うという。

法案の議会通過を受け、米国内ではSFドラマになぞらえた報道も出ている。米NBCのニュース番組『トゥデイ』は超常現象をテーマにした人気TVシリーズを念頭に、「もしも『X-ファイル』が現実の物語だったなら、(主人公の)モルダーとスカリーには新しいオフィスが用意され、莫大な資金が与えられたことだろう」と親しみやすく紹介している。

UFOs Are Focus Of New Push For Expanded Government Investigation


UFOの議論、もはやオカルトではなく

これまでUFOといえば、SF映画やオカルトなどの文脈で語られることが大半であった。しかし近年では、アメリカ空軍のパイロットが戦闘機のコクピットからUFOを目撃するなど、一定の信憑性を帯びた目撃情報や証拠映像などが寄せられるようになってきている。英サン紙は、「陰謀論者界隈の話題だとあしらわれてきたUFOは、ここ数年でまぎれもない国防上の議論へと発展した」と指摘する。

こうした現象のすべてが未知の飛行物体であるとは限らないが、なかには分析の結果、現在の航空テクノロジーでは説明できないほどの速度で飛行していると認められた現象もある。サンディエゴ沖で空軍パイロットが謎の飛行物体を目撃し、動画にも残った「USSニミッツUFO事件」は有名な一例だ。

米政府は昨年6月、UFOの目撃情報に関する報告書を公開した。2004年以降に軍関係者から寄せられた目撃情報を分析した結果、既知の飛行現象としてまったく説明のつかないものが140件ほど存在したという。ニューヨーク・ポスト紙などが報じている。


もっとも、今回設置が承認された異常現象監視・解決局は、地球外生命体への対応を主眼としたものではないようだ。同じ地球上にある他国のテクノロジーからアメリカを防衛することを目的としている。法案は設立の趣旨として、「未確認飛行現象と、敵対的外国政府、その他の外国政府、および非政府者との関連を評価する」と明言している。海外が極秘に開発を進める兵器などを念頭に置いたものとみられる。

国防上重要な調査、以前にも極秘に実施

カーステン・ギリブランド米上院議員はトゥデイに対し、「何を認識できるかを明らかにし、危険に対して見てみぬふりをしないための試みだと理解しています。これら(未確認飛行現象)は国防上の深刻な問題であり、我々が把握しておくべき技術なのです」と語る。

以前にもペンタゴンは、秘密裏に同種の調査計画を実施したことがあった。同省は2017年、「先端航空宇宙脅威特定プログラム」と呼ばれる調査活動を2012年まで実施していたことを認めた。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米小売売上高4月は前月比横ばい、ガソリン高騰で他支

ワールド

スロバキア首相銃撃され「生命の危機」、犯人拘束 動

ビジネス

米金利、現行水準に「もう少し長く」維持する必要=ミ

ワールド

バイデン・トランプ氏、6月27日にTV討論会で対決
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 3

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 4

    それでもインドは中国に勝てない...国内企業の投資意…

  • 5

    マーク・ザッカーバーグ氏インタビュー「なぜAIを無…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    奇跡の成長に取り残された、韓国「貧困高齢者」の苦悩

  • 8

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中