最新記事

追悼

「お情けのパン屑はいらない、私がほしいのは人権のフルコースだ」──南アフリカ・ツツ元大主教の名言集

Desmond Tutu's Most Profound Quotes As Archbishop and Anti-Apartheid Campaigner Dies Aged 90

2021年12月27日(月)18時19分
エマ・ノーラン
デズモンド・ツツ

現代の大賢人だったツツ(写真は2013年) Anindito Mukherjee-REUTERS

<南アフリカのアパルトヘイトと戦い、ノーベル平和賞を受賞したツツ元大主教が死去した。彼が遺した崇高な思想に人類はキャッチアップできるのか>

デズモンド・ツツ元大主教が南アフリカのケープタウンで死去した。90歳だった。同国初の黒人大統領となった故ネルソン・マンデラ氏と同時代にアパルトヘイト(人種隔離)制度の撤廃に尽力したその功績を称える声が寄せられた。

ツツは少数派の白人が南アフリカを支配し、多数派の黒人を残忍に抑圧する制度の撤廃を訴え、非暴力的な抗議活動を展開し、1984年にノーベル平和賞を受賞した。

「デズモンド・ツツ元大主教の逝去は、南アフリカの偉大な世代がまたひとり、失われたことを意味する。解放された南アフリカを後世に残すために力を尽くした世代だった」と、南アフリカのシリル・ラマポーザ大統領は声明で別れを惜しんだ。

「南アフリカの路上の抵抗運動から、世界中の大聖堂や礼拝所の説教壇、そして権威あるノーベル平和賞授賞式の式典まで、ツツ元大主教は宗派に関係なく、普遍的な人権の擁護者として頭角を現した」

ツツは、自由を獲得するために戦う南アフリカの黒人を率いるリーダーのひとりであり、非暴力的な運動のリーダーとしても知られていた。

アパルトヘイト崩壊後は同性愛者の権利獲得運動や、イスラエルとパレスチナの紛争、イラク戦争への反対など多くの問題について、活動家として積極的に発言した。

真実の言葉の数々

ツツは多くの名言を残しており、その英知によって後世にその名を残すだろう。

ツツの最も深遠な言葉のいくつかを紹介しよう。

「不当なことが起きているときに中立を主張することは、抑圧する側を選んだということだ。象がネズミの尻尾を踏んづけているときに、あなたが中立だと言っても、ネズミはあなたが中立だとは決して思わないだろう」(オックスフォード・リファレンスより)

「私のことを奴隷と考える人の食卓から投げられたお情けのパンくずを拾うことには興味はない。私がほしいのは、人権のフルコースだ」(1985年1月、BBCより)

「加害者には角もなければ、尻尾もない。あなたや私と同じくらい普通に見える。ヒトラーを支持した人々は悪魔ではなく、多くの場合、非常に立派な人だった」(2006年2月、BBCより)

「私は同性愛を嫌悪する神を崇拝しないだろう。それほど私はこのことについて深刻に考えている。天国が同性愛を嫌悪するなら、私は行かない。申し訳ないが、そんなところより、ほかの場所に行くほうがいい。私はこの活動に、アパルトヘイト撤廃運動並みの情熱を持っている」(2013年の国連の同性愛者の権利擁護キャンペーン開始に際しての演説。BBCより)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国国家主席、セルビアと「共通の未来」 東欧と関係

ビジネス

ウーバー第1四半期、予想外の純損失 株価9%安

ビジネス

NYタイムズ、1─3月売上高が予想上回る デジタル

ビジネス

米卸売在庫、3月は0.4%減 第1四半期成長の足か
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食...止めようと叫ぶ子どもたち

  • 3

    習近平が5年ぶり欧州訪問も「地政学的な緊張」は増すばかり

  • 4

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 5

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 6

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 7

    迫り来る「巨大竜巻」から逃げる家族が奇跡的に救出…

  • 8

    イギリスの不法入国者「ルワンダ強制移送計画」に非…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 10

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中