最新記事

台湾有事

「台湾軍は米軍頼りで弱い」は本当か?──台湾の国防相が反論

Taiwan Defense Chief Offers Fighting Talk Amid Doubts About Troop Readiness

2021年10月29日(金)14時16分
ジョン・フェン
台湾の邱国正国防相

記事は「一方的」だと反論した邱国正国防部長 Ann Wang-REUTERS

<米ウォール・ストリート・ジャーナル紙が徴集兵の訓練は4カ月間のみで内容は「草むしりや落ち葉掃除」ばかりとした衝撃の報道は本当なのか>

台湾軍は中国と戦う準備ができていない――米ウォール・ストリート・ジャーナル紙が複数の新兵の証言を基にこのように報じたことに、台湾国防部のトップが反論した。

台湾情報機関の元トップでもある邱国正国防部長(国防相)は10月28日、立法院(議会)で行われた聴聞会に出席。26日のウォール・ストリート・ジャーナルの記事について、複数の議員から厳しい質問を受けた。聴聞会は5時間に及んだ。

同紙による報道は、台湾の社会と政界に大きな波紋を呼んでいる。記事には数多くの徴集兵のインタビューが引用されており、彼らは台湾の予備役(書類上は200万人超にのぼる)について、技術面でも精神面でも、中国と戦う備えはできていないという見方を示した。

一部の徴集兵は同紙の取材に対して、「不十分な備えと士気の低下」が懸念されると語っている。台湾は徴兵制と志願兵制の両方を取り入れており、将来的には志願兵制に完全移行する予定だ。徴兵制では現在、毎年およそ8万人を新たに徴兵しているが、彼らが受けるのは基礎訓練のみで、訓練期間はわずか4カ月だ。

インタビューに応じたある徴集兵は、訓練期間中にやったことは落ち葉掃除、タイヤの移動と草むしりだったと語った。別の徴集兵は、時間をつぶすために意味のない任務をこなしていたと語った。「複数の世論調査やインタビューの結果を見ると、多くの台湾市民が、深刻な危機が生じた場合、アメリカが対処してくれることを期待しているようだ」とウォール・ストリート・ジャーナルは報じた。

「重要なのは志願兵とリーダーシップ」

28日の聴聞会の中で徴兵制について質問を受けた邱は、同紙の報道に異論を唱え、記事は4カ月間という訓練期間に焦点を当てて、台湾軍の備えについて「一方的な」見解を示したものだと主張した。

「問題の記事が、何を根拠に(軍の備えについて)評価を下しているのか分からない」と邱は述べた。「我々は、4カ月間の軍事訓練を基に評価を行ってはいない。当初、徴集兵の訓練期間は2年間だった。今では志願兵制度も導入されており、志願兵が軍の要員の90%にのぼっている」

国防部は4月に発表した報告書の中で、戦闘部隊に必要な総兵力18万8000人のうち、16万9200人を確保済みだと明らかにしていた。兵士以外の人員も合わせた軍の人員枠は21万5000人となっている。

「志願兵の兵役期間は4年以上となっており、過去の徴兵制に比べると改善されている」と邱は議員らに説明し、こう続けた。「我々は志願兵の部隊に重点を置いている。彼らは4年以上にわたる訓練や演習を通して、武器や装備についての技術や知識を磨いていく」

与党議員から、ウォール・ストリート・ジャーナルの下した評価について改めて問われると、邱はいつになくきっぱりとした口調で、次のように述べた。「私が取材を受けていたら、重要なのはリーダーシップだと答えていただろう」

「台湾軍の部隊に、敵に抵抗する決意があるのかとあなたは問うが、私にその決意があるのだから、ほかの者にもあるはずだ。軍の全ての将校にその決意があれば、異なる考えを持つ者などいないはずだ」と彼は述べ、さらにこう続けた。「国防部長として私は、最後の最後まで敵に抵抗する強い決意を持ち続けることを、ここに断言する」

「私は軍の各部隊を信じている。重要なのはリーダーだからだ。そのほかの者については、教育や訓練を重ねていけばいい」とも彼は述べた。「全員が私の掲げる基準を満たすまで、訓練を受けることになる」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

為替政策のタイミング、手段について述べることできな

ビジネス

都区部CPI4月は1.6%上昇、高校の授業料無償化

ビジネス

米スナップ、第1四半期は売上高が予想超え 株価25

ビジネス

ロイターネクスト:米経済は好調、中国過剰生産対応へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中