最新記事

台湾情勢

台湾緊張、飛来した中国機の数だけでなく編成が物語る本気度

Taiwan Official Calls China Situation “Most Severe”in Decades

2021年10月7日(木)17時47分
ローレン・ジエラ

軍備の刷新と拡大を急速に進めてきた中国は、今回のオペレーションで軍用機の性能と操縦技術の向上を見せつけたと、台湾のシンクタンク・国防安全研究院の研究員Chen-Yi Tuは言う。

わずか2、30年前まで中国空軍は空中給油もできなかったと指摘するのは、スタンフォード大学フリーマン・スポグリ国際研究所の研究員、オリアナ・マストロだ。

「その頃とは状況が変わり、今では自分たちにも複数の選択肢があると、中国はアメリカと台湾に見せつけたいのだろう。自分たちはやりたいことをやる、抑止力など効かない、と」

一方で、民主主義国が続々と台湾支援を表明し、台湾近海での合同演習に参加している。

中国が軍用機を台湾のADIZに飛ばしたまさにその時期、アメリカ、イギリス、オランダ、カナダ、ニュージーランドの5カ国の海軍と日本の海上自衛隊は「自由で開かれたインド太平洋」構想の一環として、日本の沖縄と台湾北東部に近い海域で、空母3隻と日本のヘリコプター搭載護衛艦1隻を含む17隻の艦船による合同演習を実施した。

日本も中国の脅威を認識

9月末には英海軍の空母打撃群所属のフリゲート艦「リッチモンド」が台湾海峡を通過したことを公式ツイッターで明らかにした。中国はこれに猛反発し、「陰湿な意図による無意味なプレゼンスの誇示」だと非難した。

自国の行動はアメリカの動きに対抗するものだと、中国は繰り返し主張してきたが、民主主義陣営はこれを認めず、海事に関する国際法と国際的な規範を守り抜くという明確な意思表示をしていると、グレアムは言う。

「イギリスが2008年以来初めて台湾海峡に艦船を派遣し、中間線に沿って航行させたのは、この線を越えることは許さないと中国側に警告するためだ」

中国を牽制するため、9月にイギリスとアメリカから技術供与を受けて原子力潜水艦を建造する計画を発表したオーストラリアも、今回の中国軍機の飛行を非難している。

これまで長年、重要な貿易相手国である中国と良好な関係を保とうとしてきた日本も、東シナ海や台湾海峡における中国の挑発的な行動のエスカレートを自国の安全保障に対する脅威とみなすようになった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

S&P、トルコの格付け「B+」に引き上げ 政策の連

ビジネス

ドットチャート改善必要、市場との対話に不十分=シカ

ビジネス

NY連銀総裁、2%物価目標「極めて重要」 サマーズ

ビジネス

パラマウント、スカイダンスとの協議打ち切り観測 独
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前の適切な習慣」とは?

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中