最新記事

法医学

ワクチン接種が進む中で「異状死」が急増、日本の「死因不明」社会の闇

2021年9月30日(木)21時08分
山田敏弘(国際ジャーナリスト)

陽性であれば、死因は「新型コロナ感染症による急性肺炎」などと片付けられることが多い。

しかし問題は、そこに「殺人」が埋もれていても、そこまで追求されない可能性があることだ。また「未必の故意」などが隠れている可能性も否定できないのだ。例えば、新型コロナで自宅療養中に、家族が心臓病の薬をわざと与えない、などといったケースが想定される。

ワクチン接種が原因の死亡例は?

さらに最近では、ワクチン接種率が日本でも高まっているが、それに伴って、ワクチン接種が原因で死亡するケースがあるのではないかとの不安が一部の国民の間にも広がっている。

厚生労働省が公式サイトで公開しているワクチン接種後の死亡ケースの一覧を見ても、すべて「因果関係は不明」「因果関係を証明できない」とまとめられている。本当に、因果関係はわからないのだろうか。奥田教授は言う。

「実際にそういうご遺体を解剖もしたこともありますが、因果関係はなかなか証明が難しい。医学界でも、まだその因果関係ははっきりと言えていないのが現実です。ワクチン後の心筋炎がニュースになったりしていますが、まだそれらも明確にワクチンが原因だと言えるほどではないと思います」

つまり、未知の感染症である新型コロナの予防策として、急ピッチで製造・接種が行われたワクチンの安全性については、これまでの接種者などにからむデータなどから、かなり安全であるとも言われている。ただその一方で、まだその真の怖さや破壊力までわかっていないと懸念する声もある。死因究明をする法医学者の世界でも、まだわからないことが多い、ということだろう。

日本の死因究明制度の問題点が図らずも浮き彫りになった今回の新型コロナの蔓延。拙著『死体格差 異状死17万人の衝撃』には、現代日本の死因究明をどう改善すべきかも各地の法医学者たちへの徹底取材から議論している。ぜひご一読いただきたい。

『死体格差 異状死17万人の衝撃』
著者:山田敏弘
出版社:新潮社
(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英サービスPMI4月改定値、約1年ぶり高水準 成長

ワールド

ノルウェー中銀、金利据え置き 引き締め長期化の可能

ワールド

トルコCPI、4月は前年比+69.8% 22年以来

ビジネス

ドル/円、一時152.75円 週初から3%超の円高
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中