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「今、何が問題か」と問われれば、ただちに「中国」と答える

2021年7月14日(水)17時20分
三浦雅士(文芸評論家)※「アステイオン」ウェブサイトより転載

指摘するまでもなく、このような俯瞰は、ウォーラステインからグンダー・フランクにいたる経済史の見方と対応している。焦点がアフリカから中国に移っただけなのだ。『中国の科学と文明』を書いたのはニーダムだが、『中国の経済と社会制度』がいずれ誰かによって書かれなければならないだろうと私は思う。

特集外になるが、北岡伸一「西太平洋連合を構想する」には、年来思い描いてきたことなので思わず膝を打った。むろん政治経済において賛意を表するほどの知識があるわけではない。芸術史、とりわけ舞踊史において、構想してきたことなのである。

インドネシア舞踊がミャンマー、カンボジア、ベトナムを通って北上し、沖縄から日本――つまりは能――へと至ることは人類学史上のほとんど事実である。中国、朝鮮は、遊牧民の身体所作を承けてむしろ異質なのだ。

柳田國男、折口信夫の名を出すまでもなく、この北岡構想には多くの人を魅了する力があることを特筆しておきたい。文化が後押しすることは疑いない。知的な刺激に満ちた一冊であることを強調しておく。

三浦雅士(Masashi Miura)
1946年生まれ。文芸評論家。弘前高校卒業。1969年、青土社創立と同時に入社。『ユリイカ』、『現代思想』編集長などを務める。『メランコリーの水脈』(福武書店、サントリー学芸賞)、『身体の零度』(講談社、読売文学賞)など著書多数。

※当記事は「アステイオン」ウェブサイトからの提供記事です。
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