最新記事

署名キャペーン

Amazonのジェフ・ベゾスは地球に還ってこないで...署名が14万筆を突破

2021年7月2日(金)16時00分
青葉やまと

搾取で批判の槍玉に

署名キャンペーンが多数の賛同者を集めている背景には、ジェフ・ベゾス氏の富は個人の力だけで築いたものでなく、労働階級からの搾取のうえに成り立っているとの考え方がある。ベゾス氏がCEOを務める米Amazonは、流通倉庫の劣悪な労働環境や低賃金の待遇などが労働者搾取にあたるとして、たびたび批判の的となってきた。

億万長者は何もベゾス氏だけではないが、氏が署名キャンペーンの槍玉に上がったのは、こうした無力な労働階級に付け込む行いが目立つためだろう。2019年頃には倉庫の従業員はトイレに行く自由もなく、持参した飲料ビンへの用足しや紙おむつの着用を強いられているなどとして世界各地で問題化した。今年4月には米アラバマ州の物流倉庫従業員に圧力をかけ、労働組合結成を阻害したとして物議を醸している。

ベゾス氏の名誉のために申し添えるなら、イーロン・マスク氏やビル・ゲイツ氏などほかの億万長者と同様、ベゾス氏も慈善活動への寄付を行なっている。米フォーチュン誌は、2020年に最大の寄付を行なったのはほかならぬベゾス氏であったと報じている。その額は100億ドルという巨額で、資金によって設立された「ベゾス地球基金」を通じ、気候変動に関する複数のNPO団体を支援する計画だ。

ほかにもあるユニークな署名キャペーン

億万長者というのはいつの世も人々の反感の対象となるもので、署名収集サイトの『Change.org』にはこれ以外にもさまざまなキャンペーンが展開されている。ベゾス氏の名前で検索すると、ヒットする署名活動は800件を超える。

最も目立つのは、気候変動を防止し持続可能な食料調達を実現するなど、環境活動への支援を要望する真っ当なものだ。過去にアマゾンの熱帯雨林で起きた火事への支援を乞うものなど、社名にかけたキャンペーンも見受けられる。

しかし、なかには「ジェフ・ベゾスにモナリザを購入して食べてほしい」など無茶な要望も見られる。発起人は、「誰もモナリザを食べたことがないので、ジェフ・ベゾスが姿勢を明確にし、実行した方が良いように思う」と説明している。発起人はニューヨーク・タイムズ紙に対してジョークだったと述べているが、訳のわからないほど巨額の富には訳のわからない用途が似つかわしい、との若干の皮肉も含まれているようだ。

ジョークに便乗し、モナリザの方こそベゾス氏を食べるべきだとする嘆願も登場した。「誰もジェフ・ベゾスを食べたことがないので、モナリザがこれに気づき、実行に移した方が良いように思う」と、キャンペーン概要も本家のオマージュになっている。

ちなみに本題の帰還防止キャンペーンだが、本件への対抗としてか、6月21日には「ジェフ・ベゾスの地球帰還を歓迎しよう」という署名活動がスタートした。氏はかけがえのない天才だと主張するこのキャンペーンは、70名少々の賛同を集めている。14万筆には遠く及ばずとも、少なからず擁護する動きはあるようだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 

ビジネス

米地銀リパブリック・ファーストが公的管理下に、同業

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年2月以来の低水準
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ」「ゲーム」「へのへのもへじ」

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    走行中なのに運転手を殴打、バスは建物に衝突...衝撃…

  • 7

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 8

    ロシア黒海艦隊「最古の艦艇」がウクライナ軍による…

  • 9

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 9

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中