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コロナで危機に瀕したグローバル化...だが貿易のメリットを世界が再評価し始めた

GLOBALIZATION STILL ALIVE AND WELL

2021年6月15日(火)19時24分
ダニエル・グロー(欧州政策研究センター研究部長)

その結果、5000超の品目のうち、EU圏外からの輸入に大きく依存している製品はわずか137品目(EUの輸入総額の約6%)。うち輸入先を増やすか、EU内の生産に切り替えることが難しく、緊急時の確保がより危ぶまれる製品は34品目(輸入総額の0.6%)にすぎなかった。

つまりEUのような大規模な経済圏では、圧倒的多数の製品は既に供給網が十分に多角化されていて、特定のサプライヤー頼みではなくなっている、ということだ。さらに輸入依存度が高い137品目の大半は貯蔵可能な原料などで、戦略的な備蓄をすれば緊急事態に対応できることも分かった。

こうした実情を見れば、パンデミックの影響で各国が保護主義に走る恐れはないと考えていい。実際、一部の国々は経済回復の起爆剤として貿易振興に力を入れている。

グローバルなサプライチェーンはパンデミックを経て、より強固なネットワークに再構築されつつある。世界経済を襲った深刻な景気後退も保護主義の波を引き起こさなかった。国境を越える財とサービスの流れはこれから急加速するだろうし、カネと人の流れもそれに続くだろう。グローバル化の時代に幕を引くのは拙速に過ぎる。

©Project Syndicate

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