最新記事

中国社会

人口減少が近づく中国 子育てにかかる費用とは

2021年6月7日(月)10時08分
上海のショッピングモールで遊ぶ子ども

中国の都市部では育児のための費用が上昇しており、夫婦の多くが子どもを持つことをちゅうちょしている。写真は6月1日、上海のショッピングモールで撮影(2021年 ロイター/Aly Song)

中国政府は5月31日、1組の夫婦が最大3人までの子どもを持つことを認めることを発表した。最近のデータにより、世界で最も人口の多い中国で出生数が劇的に減少していることが示されたことを受け、子どもを2人までに制限していた政策を大きく変更する。

中国の都市部では育児のための費用が上昇しており、夫婦の多くが子どもを持つことをちゅうちょしている。2016年に中国政府が「1人っ子政策」を撤廃したが、それにもかかわらず、出生率は女性1人当たりわずか1.3人に低下した。

では、中国の大都市で子どもを育てようと思ったら、どれくらい費用がかかるのだろうか。

出産費用

中国の公立病院で出産する場合は、妊娠期の検査や分娩時を含め、費用は国の保険でカバーされるのが普通だ。だが、公立病院のリソースがひっ迫しているため、民間のクリニックを頼りにする女性が増えており、こちらでは10万元(約172万円)以上の料金を請求される。

裕福な家庭では、出産後1カ月間、母親と新生児の世話をするために「月嫂」と呼ばれる専門のベビーシッターを雇うのが通例であり、その費用が約1万5000元かかる。中国では所得水準の向上に伴い、産後まもない母親が専門的な診療やサービスを提供する分娩後診療センターに集まるようになっているが、これも費用は高い。北京市内の王府井地区にある施設の場合、月15─35万元だ。

住居費・教育費

オーストラリアとニュージーランドから輸入される粉ミルクを与える時期が過ぎ、幼児教育施設に送り出すようになると、裕福な親たちは、北京市内の海淀地区など、名門校のある地域でマンションを探す。このあたりの住宅コストは1平方メートル当たり平均9万元以上で、マンハッタンの価格の中央値に匹敵する。

「戸口」と呼ばれる居住許可がなく公立学校への入学資格が得られない子どもは私立学校に入学するが、年間4万─25万元の学費がかかる。

子煩悩な親の大半は1人しかいない子どもにお金を惜しみなく使い、個別指導の学習塾や、ピアノやテニスなどといった習い事に通わせる。

競争は非常に激しい。子育て世代のあいだでは「鸡娃」(「鶏の子」の意)という言葉がよく使われる。親が自分の子をいくつもの習い事に通わせ、精力を増すという「鶏の血」を子どもに注ぎ込んでいる、という趣旨だ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中