最新記事

移民

移民の流入を減らしたいなら、カギは農業の支援にあり

STEMMING MIGRATION BY FARMER AID

2021年6月3日(木)20時20分
メーガン・ロス

人的資本と地域開発への投資

国連食糧農業機関(FAO)によると、多くの支援活動が女性の役割を重視するようになった。ワールド・ネイバーズもFFSに女性を参加させようと力を入れている。男性が畑に出ている間、女性が率先して家庭菜園の手入れやひよこの世話をしていると、シェクターは言う。女性は「コミュニティーを祖国につなぎ留める重要な要素」なのだ。

「彼女たちが自分でビジネスを始め、日々口にする水や食べ物の質を向上させる手助けをする。私たちはそのための方法を考え続ける」

こうした取り組みは全て、「彼女たちが健康で、子供が健康で、夫が都市やアメリカで働いて家族に送金する必要がなくなるようにするためだ」と、シェクターは続ける。

FAOが2018年に発表したFFSの分析でも、女性は「食料安全保障と貧困削減戦略の基本」とされている。「基本的に母親が健康で元気なら、家族全員が元気になる」と、シェクターは言う。「女性が隣人と話をして、情報を交換し、ポジティブな経験を共有できるようにすることは、人々が祖国で暮らし続けられるようにする戦略において、何よりも大きな効果があるだろう」

一方で、国連の世界食糧計画(WFP)は地域社会への投資を促すために、子供に重点を置いた活動を行っている。その一例が、グアテマラの教育省と協力して、学校で子供に食事を提供する教育センターと地元農家を結び付ける取り組みだ。

WFPグアテマラ事務所のリーナ・シュブマンは、農家に安定した収入源を提供することによって、「彼らの基礎体力を高め、自分たちのコミュニティーを発展させるために投資を続けようという動機を支える」と語る。「まさに、人的資本と地域開発への投資だ」

ただし、余った作物をどこに売るのか、天候が収穫量を左右するのではないかといった懸念から、学校給食プログラムへの参加をためらう農家もいると、シュブマンは認める。「この2つは農家にとって大きなリスクで、中長期的な体力や食料安全保障に影響を与えている」

17年にグアテマラ政府は、学校が購入する食材の50%以上を家族経営の農家から調達することを義務付ける法律を可決した。WFPで学校給食プログラムを担当するカレン・ケスラーによると、50%という基準は、生徒に健康的な食事を提供することと、地元の農家に安定した収入源を提供することを同時に実現しようというものだ。学校が家族経営の農家に支払うカネは、地域社会に還元されることになる。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 

ビジネス

米地銀リパブリック・ファーストが公的管理下に、同業

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年2月以来の低水準
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 4

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 5

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 8

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 9

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 8

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中