最新記事

研究所起源説

トランプ氏「中国は世界に10兆ドル賠償すべき」 武漢ウイルス研究所起源説で

2021年6月7日(月)18時00分
青葉やまと

また、ファウチ氏の立場表明を電子メールで称賛していた米国立衛生研究所は、米NPOを通じて武漢のウイルス研究所に補助金を拠出していたことが判明している。ファウチ氏はこの補助金がウイルスの機能獲得実験に使われたことはないと議会で証言しているが、その根拠は示さなかった。

トランプ氏こそ元凶では、と冷ややかな反応も

このようにトランプ氏は、賠償金請求を軸に政敵批判にも話題を展開し、存在感を大いにアピールした。しかし、USAトゥデイ紙の視線は冷ややかだ。トランプ氏を「二期目の確保に熱心な不安定な大統領」だと表現し、任期中にコロナを「中国病」などと呼んだことで中国の態度を硬直化させ、結果的に世界的なパンデミックの悪化を招いた張本人だと批判する。流出説が昨年時点で陰謀論扱いに終始したのも、トランプ氏が根拠のない自説の披露を頻繁に行っていたためだ、と容赦ない。

共和党集会で演説したトランプ氏は、再出馬を否定しなかった。中国を槍玉に挙げる鮮烈なメッセージは、今後を見据えた強かな戦略の一部なのかもしれない。米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は「フェイスブックとツイッターなどSNSから追放されたトランプ氏にとって、公の場に姿を現すことは知名度を保つための一つの方法だ」と指摘する。ツイッター、フェイスブック、インスタグラムから相次いでアカウントを凍結され、得意のSNS戦略を封じられているだけに、刺激的なスピーチで耳目を集めたいところだろう。

研究所流出説は目下再調査中だが、現在のところ何かしら決定的な証拠が公表されたわけではない。賠償金を支払うべきだとトランプ氏は主張するが、世界的な賠償請求のうねりの発端となるか、あるいは次期大統領選をにらんだアピールに終わるのか、先行きは不透明だ。

Donald Trump says 'I was right about Wuhan lab leak' | China virus | Coronavirus |World English News

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

パラマウント、スカイダンスとの協議打ち切り観測 独

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年1月以来の低水準

ワールド

アングル:コロナの次は熱波、比で再びオンライン授業

ワールド

アングル:五輪前に取り締まり強化、人であふれかえる
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前の適切な習慣」とは?

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中