最新記事

コロナワクチン

中南米で米国ワクチン接種ツアーが人気 航空運賃も急騰

2021年5月17日(月)11時34分

ワクチン接種のために米国を訪れたラテンアメリカ諸国民の数に関する公式なデータは見当たらなかった。旅行者が渡航理由としてワクチン接種を挙げることは一般的ではない。

だが米国の都市は、資金繰りに苦しむホテル、レストランやその他のサービス産業が切望していたビジネスをもたらすワクチン接種ツアーのブームに飛びついた。

ニューヨーク市政府は5月6日、ツイッターに「ニューヨークへようこそ。ワクチンがあなたを待っています。当市を象徴する名所で、J&J製ワクチンを接種いたします」と投稿した。

在ペルー米国大使館は最近のツイッターへの投稿で、ペルー住民に対し、ワクチン接種を含め医学的処置のために米国を訪問することは可能だとアドバイスしている。

米国への観光ビザで渡航したラテンアメリカ諸国の住民にロイターが取材したところ、自国の身分証明書があれば接種を受けることができたと話した。

はるか南のアルゼンチンでも、旅行代理店がワクチン接種ツアーを販売している。

ブエノスアイレスで見られる広告では、マイアミでワクチン接種を受けるための推定費用が詳しく示されている。航空運賃が2000ドル(約22万円)、1週間のホテル滞在費が550ドル、食費350ドル、レンタカー500ドル、ワクチン接種は無料。合計で3400ドルだ。

自国では早期接種の見込みなし

当初、ワクチン接種ツアーを希望するのはラテンアメリカ諸国の富裕層が中心だったが、現在では、それほど裕福ではない人々の予約も増えつつある。多くの人にとっては、長時間に及ぶフライトの費用だけでも一大事である。

リマの自動車用品店の従業員は「6月にカリフォルニアに行くためにお金を集めている」と話す。「国内の状況を考えると、近いうちにワクチン接種を受けられる見込みはまったくない」

前出のサンチェス氏によれば、米国へのワクチン接種ツアーの参加理由として一般的に挙げられるのは、大半のラテンアメリカ諸国でワクチン接種が遅れていることだという。

国内にワクチン製造のためのインフラがほとんどまったく無いため、ラテンアメリカでのワクチン接種計画においては、ワクチン供給の遅れや不足が壁となっている。米疾病対策センター(CDC)と「アワー・ワールド・イン・データ」によると、米国はすでに2億6200万回近いワクチン接種を行った。これは、合計人口では米国の約2倍に当たるラテンアメリカ全体の接種回数の約2.3倍となっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

韓国外貨準備、4月は19カ月ぶり大幅減少 介入で

ビジネス

テスラがソフトウエアやサービスなどの部門でレイオフ

ワールド

ヨルダン国王、イスラエルのラファ侵攻回避訴え 米大

ビジネス

米商工業と家計の借り入れ需要減退=FRB融資担当者
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 2

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    メーガン妃を熱心に売り込むヘンリー王子の「マネー…

  • 7

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 8

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 9

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 10

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 5

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中