最新記事

話題作

「鬼滅の刃」世界的人気! 韓国でも反日感情を跳ね返す躍進続く

‘DEMON SLAYER’ SWEEPS SOUTH KOREA

2021年5月14日(金)19時58分
ソホ・リー
『鬼滅の刃』韓国語版コミック

物語の舞台や日韓の歴史問題をめぐるアレルギー反応も懸念されたが、『鬼滅の刃』は韓国語版コミックもベストセラーに LEE JAE-WON/AFLO

<『鬼滅の刃』が韓国で予想外の大ヒット。複雑な日韓関係に影響されず大衆文化は躍進する>

4月第3週、日本の漫画『鬼滅の刃』の最終巻が教保(キョボ)文庫書店、イエス24、インターパーク、アラジンなど韓国の大手書店で総合ベストセラー1位に輝いた。漫画が総合1位を獲得するのは2014年の韓国作品『未生 ミセン』以来の快挙で、映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の人気によるところが大きい。

映画は今年1月27日に韓国で公開された。累計動員数は4月28日時点で184万人を超え、今のところ21年のランキング2位。1日当たりの興行収入で4回トップに立ち、11週連続で興行成績トップ3入りを果たしている。

この人気は予想外だった。「15歳以上観覧可」の指定を受けたため(保護者同伴であれば15歳未満でも観覧可能だが)親子連れの集客には不利だろう。しかもディズニーやスタジオジブリのオリジナルアニメと違い、日本で19年に放映されたTVシリーズの続編なのでTVや原作を見ていないと内容についていけない。韓国ではネットフリックスが同TVシリーズを配信したのは映画公開の約1カ月後だったから、なおさらだ。

根強い日本製品の不買運動

だが最大の障害は、韓国では19年の日韓貿易紛争に端を発した日本製品や日本企業に対する不買運動が、いまだに根強いことかもしれない。20年11~12月に実施された世論調査では、71.8%が不買運動に参加したと回答、41.9%が今後も積極的に参加すると回答した。

この状況で『鬼滅の刃』は韓国では拒絶必至と思われた。物語の舞台が大正時代(1912~26年)なのも不利だ。日本で大正時代は、25年に治安維持法が制定され、30年代に軍が権力を掌握していく前の、比較的自由で安定した時代と記憶されているが、韓国では違う。大正時代の幕開けは日本の朝鮮植民地支配の最初期と重なる。憲兵警察制度による容赦ない統治は19年の3.1運動(反日独立運動)の引き金となり、植民地政府(朝鮮総督府)は一時方針変更を強いられたが、それも日本の軍国化までだった。

本作には大正時代の重要な歴史的要素は見当たらない。キャラクターの和洋折衷的なファッションなど、さまざまな場所にわずかに反映されている程度だ。主人公の炭治郎は洋服をヒントにした学ラン風の隊服の上に伝統的な羽織を羽織っている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ハリコフ攻撃、緩衝地帯の設定が目的 制圧計画せずと

ワールド

中国デジタル人民元、香港の商店でも使用可能に

ワールド

香港GDP、第1四半期は2.7%増 観光やイベント

ワールド

西側諸国、イスラエルに書簡 ガザでの国際法順守求め
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 5

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 6

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 7

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 8

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 9

    日鉄のUSスチール買収、米が承認の可能性「ゼロ」─…

  • 10

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中